私の部に二人の新入社員が入った。
私が彼らの立場だった頃から もうすでに丸4年経ち 今や私は彼らを教育する立場だ。
先日、彼らに対して 私の担当する開発品の講義をする機会があった。 大学院を出たばかりで まだ何も知らない白紙の彼らに 一体、私達がどんな仕事をしているか説明するのだ。
なので私は前の晩、ベッドの中で 一体どんな話をすればウケるだろうか。 ということについて小一時間ほど真剣に頭を悩ませ いくつかのコネタを仕込んでから講義に望んだ。
そして無事、講義が終わり どうだった?と言うコクさんに私は報告をした。
コクさん>今年の新人はどうよ?
私>ダメっすね。ヤツら大人し過ぎですよ。
コクさん>元気なかったの?
私>元気ないもなんも、僕がせっかく仕事の話そっちのけで おもしろトークしたのにクスリともしないんですよ!
コクさん>それ、ただ単につまらなかったんだろ。
あー
地下鉄の壁にある広告。 南北一直線にビシっと伸び 東西の地区にはまるで関心がないかのような とても潔い仙台の地下鉄にもそれはある。
中でも目に留まるのが
「きくた肛門科」
という文字。 もし漢字で表記するなら 間違いなく「菊田肛門科」だ。 これは。 あまりにも。 そう。 あまりにも字が対象を明確に表し過ぎている。 しかも形で。
わざわざ平仮名で表記してあるところに 大人の気遣いを感じて いつもなんだか切ない気持ちになるのは たぶん、私だけではないはずだ。
彼女とおしゃべり。 なんらかの笑い話をしている最中 突然、彼女が
「あははは。マデ?」
と言った。 マデ? 思いの外、唐突に訪れた 新しい日本語との出会い。
そんな言葉あったっけ。 私がこれまで生きてきた29年間の中で 着実に培ってきた言語に対する知識。 それらの中から検索をかけ 「マデ」という2文字にヒットする単語を探した。
-検索条件に一致するデータは見つかりません-
なんてことだ。 私の知識にはない単語。 それを彼女は知っていて 日常会話に用いているとは。 いや。 でも。 もしかしたら ひょっとしたら
「マジで?って言おうとして噛んだ?」
「うん」
なんてことだ。 割と薄々は感じていたが 明確な理由をもって突きつけられた 「私の彼女は天然」という事実。 「マジで?」を「マジ?」と 語尾を略すことはあっても まさか3文字のど真ん中を略すとは 単語の一番大事な背骨の部分を力任せに引っこ抜く あまりにも強引な試み。
「違うの。私時々、頭で考えていることと、口に出る言葉が違っちゃうの」
懸命に弁明するも 多分それってフォローになってない。 むしろ余計追い込んでる。
「それくらい分かるでしょー?」
にこやかに言う彼女。 彼女が私に要求している男としての力量は 今なおインフレを起こし続けている。
今回の一件は 私が常識や固定観念に問われず 常に予想外の試みをし続ける彼女の言わんとすることを 研ぎ澄まされた鋭い感性でもって即座に感じ取れるような そんなセンシティブ、かつミラクルな男になる必要がある。 ということを示唆している。
目覚めよ!私のシックスセンス!
朝、コンビニに寄って車に乗り込もうとして ふと目に留まった女性は モデルのように背が高く ミニスカートから出た驚くほど白い足は 笑っちゃうほど長いのだった。
あまりに日本人離れしたスタイルに 美人だ。とか、かわいい。とか思うより先に なにやらすごいものを見てしまった気がして うわぁ。 という感じでいるそんな私の横を 彼女はサラサラな髪の毛をなびかせながら 颯爽と歩いて行った。 あれは一体なんという生物だろう。 私とは進化系統が違うのだろうか。
まぁ、私の祖先はプーさんですし。 (下半身丸出しなところとかを受け継いでます)
同じチームの後輩であるグッチくん。 春から2年目となり そろそろ本格的に仕事を振っても良いころであるが なかなかそうもいかない。
明日まで。 という納期の仕事について 彼はなにもリアクションをとろうとせず やったのか?大丈夫か?間に合うのか? と私がいちいち確認する始末。 測定条件についてちゃんと他部門に確認しておいて。 と言ったら、おもむろにカタカタメールを打ち出した。
明日までに測定しないとダメなのに なに悠長にメール打ってんの? 電話しなさい。 つーかもういい。俺が電話する。
条件を確認し、グッチくんに じゃこれちゃんと測定してまとめて送るんだよ?と言うと 「僕、測定の仕方が分かりません」ときた。
うふふ。 キミ面白いこと言うじゃないか。 えーと。どこ殴る?
これが納期の緩い仕事ならば 本人のためと放っておくか 仕方ないから教えてやるところだが 納期が明日に迫っている今回は 私がやるしかなく、大急ぎで測定し データを彼に渡してあげた。 ああ。なんて優しい先輩。
そして2時間後。 ね。そろそろ俺、帰るけどできた? と尋ねると このままじゃ終わらないので 一部だけ送ってあとは明日でいいですか? と言った。
いやぁ!キミほんと面白いね! まさか途中で帰る気なのかな?! あははは。そりゃすげーや! んで、どうやって殺って欲しいんだい?!
もうここまで甘えたこと言われるとさすがに私も頭にきて もういい!データよこせ。俺がやる! 彼からデータを奪い取り、 一心不乱にexcelと格闘。 そして終わったのが午前2時。 他人の仕事でここまで残業したのは初めてだ。
もうくたびれてしまって 「こんだけ助けたんだから、メシ2回かな」 という私の言い分は、決して言いすぎではないと思う。 私が逆の立場なら、喜んでメシをご馳走する。 しかしながらそれを聞いた彼は、元気にこう言い放った。
「分かりました。じゃー。メシ。付き合います!」
付き合うのかよ!奢れよ!
ああ。ダメだコイツ。
ボールはトモダチ。を素で行く サッカーの申し子として有名なrikuですけども。 サッカーボールで足を思い切り挫いて 1ヶ月くらいギプスはめたことがある。 トモダチは裏切るものだと知った少年の頃。
ちなみに私の隣の部屋には 仙台スタジアムのフリーパスを購入するほど サッカー大好きな人が住んでいるが 日本が点を取られた瞬間、ガタガタッ!!と なにやら物音が聞こえたので笑った。 悔しくて暴れたのだと思われる。
先日、会議があった。 設計やら開発やらの部長らの前で 一通りデータのレビューを行い、 私の考えた改善案を3つほど提案しプレゼンを終えた。 部長からは「いいデータだね」とお褒めの言葉をいただき、 私も頑張った甲斐があったな。と満足げに着席しようとしたら 「で、最も優先度の高い改善案はどれ?」
私も3つの策を考えたとき、 それらが結果に与える影響の大きさを 一通り計算し、予想しておいた。 しかしながら、計算結果からは それら3つの施策には有意差は見られず また、実行に要する工数やコストも同等なため 「あー。別にどれから試しても同じくらい?」 という感じであり、返事に困った。
なので私は、あまり差がないので優先順位はつけにくいのですが・・・ と言うと、部長さん曰く 「じゃriku君が今、決めて。どれ?」 いきなりの3択問題なのだった。
私は考えても答えの出ないことは考えない主義なので だったら適当に1個選ぶつもりで、「では・・」と口を開きかけると 「当てたらボーナス2倍ね」などと爆弾発言。
なに!これはよく考えて返事せねば!と思い、 3分時間ください。 と言ってから、全力で考え始めた。
そして3分後。 うん。よし。これだ。たぶん。 決心した私が「では・・・」と口を開きかけると 今度は、「ハズしたらボーナスなしね」 と言ってから、ニヤリとした部長。
純粋な私をからかって遊ばないで欲しいのだった。
トレードオフ。という言葉がある。
例えばAというパラメータとBというパラメータがあったとして Aを改善するとBが悪くなってしまい Bを改善するとAが悪くなってしまうといった 二つが反比例するような場合、 「AとBはトレードオフの関係。」という。
この単語は仕事をする中で割りと頻繁に使われているが しかしながら私は使いこなせていない。 なぜかとっさにこの単語が頭に出てこないのだ。 いつも聞き慣れていて、何度か自分でも使っているのに いざ使おうと思うと言葉に詰まる。 そしてその代わりに私の頭の中に浮かんでくる単語は
「ああ言えばこう言う」
なのだった。
おしい! 似てる! なんか言いたい事は分かるよ! でもちょっと違うね!
トレードオフ。というなにやら格好の良い単語を 格好よく使おうとして頭に浮かんでくる ちょっと頭の悪い言葉。 その度に心の中で、おしい! と自分に突っ込んでいるのは 職場の同僚達にはまだ知られていないはずだ。
海を語らせたら右に出るものはいないと巷で噂の 根っからの海の男rikuですけども。 ちなみに海草が気持ち悪いから海で泳ぐのはあまり好きじゃない。
東北人になって3年。 ちょくちょく会社の先輩と水族館巡りをしてきた。
福島のアクアマリンふくしまはなかなか新しく 作りもお洒落なカンジでよかった。 建物の周りが芝生やウッドデッキになっていて のんびりするのにも良い。
秋田の男鹿半島にあるGAOもまた船を模した変わった建物で 半島の雄大な景色や海の味覚(岩ガキ旨かった)も楽しめ オススメである。
そして今回、青森の浅虫水族館に行って来たのだった。
しかしながら同じ東北といえど、青森は遠い。 日本で2番目の面積である岩手県を縦断し さらに浅虫は青森の北側に位置する。 ちょっとばかり日帰りはキツイ。 ということで今回は先輩であるところ山さんの奥さんも同行し 3人で仲良く一泊二日の小旅行となった。
本来なら、宿をしっかりリサーチし 周辺の見所スポットを探し出して 道程の計画を練ってから出発するところであり エンジニアとして生きる私らにとって せめて旅日程の線表を作るところから始めるべきであるが 結構、唐突に決まって、なし崩し的に旅が始まった今回は なんと土曜の午後17時に仙台を発ち 青森到着予定時刻は21時という有様。 しかも宿泊する宿は、出発後に車内から電話し 予約を取り付けるという行き当たりばったりぶり。 すてき。
一般道で走ると、到着するのは8時間後とかになるので ここは社会人らしく高速道を使う。 東北道を北上すること約3時間。 ここで山さんが 「3時間か。次は日帰りできるな・・・。」 と不吉なことを呟いていた。 この人、また青森に来る気だ。 しかも今度は日帰りで。 そしてその時、運転するのは多分私だ。 とりあえず聞こえないふりをしておいた。
宿にチェックインしてから食事にでかける。 なんせ到着したのが21時であるので 宿の晩御飯はすでに終わっている。 幸い、歩いていると良いカンジの寿司屋を見つけたので ここはひとつ、青森の海の幸を堪能することにした。
この店の大将がまたよく喋る人で そして、自画自賛な人だった。 謙遜とか遠慮とかなかった。 店のネタがいかにすごいか 聞いてもいないのにずっと喋ってた。
例えば大きなエビを持ち出して 「こんないいエビは今日は青森で3本しか揚がってないんだよ」 というので私達は 「じゃぁそれ握ってください」 と申し出たにも関わらず 「いやね。車えびじゃこうはいかないんだよ。この身がね?」 などと全然人の話聞いてない。
この店で寿司を食すには まず大将の自慢を滞りなく聞き流し 大将が飽きてきた頃に注文するのが作法らしかった。 笑った。
大将、すんごい自慢げにエビを見せる図。早く食わせろ。
大将、自慢に飽きてようやく寿司を握ってくれた図。でかい。
私がカメラを持ち出し、寿司などをバシバシ撮っていると 大将はさらに調子に乗り出し 非常に質が良いとご自慢の大間マグロのトロをさばき それをわざわざ私の目の前に差し出して ガスバーナーで炙り出すというサビース精神豊かなことをやり始めた。 もう撮ってくれと言わんばかりに。 もちろん私はそれを逃すようなことはせず
「さすが大将分かってるね!」とか 「いいねー!いいねー!もっと炙ってみようか!」 などと大将をさんざん調子に乗せながら激写していたけども それを見ていた横で山さんと奥さんは爆笑していた。 確かに横から見ていたらおかしな様子だったかも。
大将、調子に乗ってカウンターから身を乗り出す図。熱くないのか。
大将、パフォーマンスに飽きてようやく握ってくれた図。うまそー!
ともかく、マシンガントークと共に 珍しいネタやとても美味しい寿司を出してくれたりで 楽しくそしてとてもご満悦な夜なのだった。 大将またくるよ。
その夜は温泉に浸かってから3人仲良く就寝し 次の日は朝から今回メインの水族館に繰り出した。 思っていたよりも大きくてよかった。 ラッコやペンギンなどの餌やりも見ることができたし 東北ではここにしかいないというイルカのショーも見た。 調教師のお姉さんがかわいかった(なに見てるんですか)
ウミガメとにらめっこする山さん。シカトされてたけど。
そしてそのまま仙台への帰路に着きながら 奥入瀬渓流へと向かう。 ここは私が以前から行きたいと思っていた場所だ。 木漏れ日の中を渓流がサラサラと流れる癒しの光景を 喜んで写真に収めた。
今回は車で行ったので 止められる所が限られており 余す所なく見るというのはちょっと無理だった。 あれはどこかに車を置いて 川沿いに歩いて散策するのが一番だと思った。 もし機会があれば次回はぜひそうしたい。 でも多分すごい歩く(10キロくらい)
それから十和田湖畔で遅い昼ごはんを食べて 盛岡で冷麺を食べてから家に帰った。 久しぶりに遠出したし 美味しいものを食べ、綺麗な景色を見て 馬鹿な話をたくさんしたので とてもよい休日だったと思う。
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