両親を仙台に招いた。
東北は初めてという両親のために 色々計画を練り、宿を取り、あちこち連れて回った。 ベタに松島は良かったらしいし 滝を見たり、ソバ食べたり、 米沢のいい感じの旅館に泊まったり。 濃霧がすごくて私が2回行って2回ともビタイチ見れなかった蔵王のお釜を 快晴の元、見ることができたのはラッキーだった。 彼らも喜んでいたし私も幸せだ。 この歳にしてようやく少しは親孝行ができたかと思う。
ところで 蔵王のあたりを散策している時 なにやら荒涼とした場所があった。 植物があまり生えず 赤い土や岩がゴロゴロしていて まるで地獄絵図のよう。
ふと道端を見ると 岩や石がたくさん積み上げてあった。 日本人はなぜかこういう場所にある石を 積み上げたがる。 これは「賽の河原」に由来していると思われる。
賽の河原地獄とは 子供が一生懸命積み上げた石を 鬼達がエイヤと崩し 石を積み上げる作業を延々と続けさせられる そんな地獄だったと記憶している。
ゴールが全く見えず 単純作業を繰り返し そしてその努力の報われない世界。
「も、もう少しで終わる・・。このデータをまとめたら終わりだ・・。」
「あ。これ追加で測定して?あと悪いんだけど指示した条件間違ってわ。これも再測定しといて。」
あ。仕事と一緒だ。
彼女と二人でドライブ。 道中、ダムの横を通った折に 彼女が突然、
「ねぇねぇ。デムさ・・・」
と言った。 デム? 思いの外、唐突に訪れた 新しい日本語との出会い。
そんな言葉あったっけ。 私がこれまで生きてきた28年間の中で 着実に培ってきた言語に対する知識。 それらの中から検索をかけ 「デム」という2文字にヒットする単語を探した。
-検索条件に一致するデータは見つかりません-
なんてことだ。 私の知識にはない単語。 それを彼女は知っていて 日常会話に用いているとは。 いや。 でも。 もしかしたら ひょっとしたら
「ダムって言おうとして噛んだ?」
「うん」
なんてことだ。 思いの外、唐突に突きつけられた 「私の彼女は天然」という事実。 2文字さえ噛むか。
「違うの。「でも、ダムって・・」って言おうとしたの!」
「でも」と「ダム」をたして「デム」か・・・。 あらゆる外来語を日本語化し、単語を略し 常に新しい言葉を作り出す若者達。 しかしながら、文章を略す試みは初めてだ。 それはもう言葉のカバーする 表現領域を軽く越えていると思う。 それはテレパシーとかの世界。
「それくらい分かるでしょー?」
にこやかに言う彼女。 彼女が私に要求している 男としての力量は 私が人間の域を越えなければ達成できない 厳しいものとなってきた。
そろそろ山ごもりが必要かと思う。
長い会議なのだった。
狭い会議室にたくさんの人がいて 室温は徐々に上がり とても暑苦しい。
私は足を冷やして休ませようと そっと靴を脱いだところ 驚くべきことに 左右の靴下の色が違う。
朝、寝ぼけて間違えた。
そんなお茶目な私であるが ここは職場である。 食うか食われるかの世界。 そんな弱みなど見せられない。 誰も気付いていないことを確認し 私はそっとその靴下を脱ぎ ポケットにしまった。
よし。 ミッションコンプリート。
そしてふと足元を見てみれば 足の爪には 先日、彼女にイタズラで塗られた マニキュアがキラリ。
忘れてた。 慌てて靴下を履く私。 靴下を見られたほうがまだマシという判断である。
ところが あまりにゴソゴソやっているため 他の人の注意をひいてしまい 結局のところ、 足のマニキュアと、そして靴下の左右を間違えた事実が 両方とも知れ渡ってしまったのだった。
ことわざで 「二兎追うもの一兎も得ず。」 という言葉があるが
今回の場合、 「二兎なんて全然追ってないのに二兎得ちゃった。」 ということわざがしっくりくると思う。
同期である彼はちょっと大人しく もうちょっと言うと暗い。 ぱっと見、秋葉系であり もうちょっと言うとキモイ。
彼がエッチなナニを たくさん所有していると知ってからというもの 顔を合わす度に冗談半分で 「いつエロゲー貸してくれんの?」 と、からかっていた私。 そんな彼が珍しく私の席にやってきて 「これ。約束の」 と言って袋を置いて去っていった。 中を見てみるとエロゲーがひとつ。 うわー、会社で渡すなよー。
ともあれ エッチなナニをたくさんアレしている 彼が貸してくれたエロゲーだもの。 さぞかし厳選された一品なのでありましょう。
で、早速家に帰ってみてみると 包装からケースから全てキッチリと保管してあるエロゲー登場。 私であればビリビリに破いて捨ててしまうであろう CD-ROMのケースの包装までちゃんととってある。 すごい。 これ素手で触ってもいいのかな。 手袋とかしなくていいかな。 指紋つけたら怒られそう。
折り目のついていない説明書にのっとり マイPCにインストール。 CD-ROM3枚分。3枚て。 OSでも1枚で済むのに・・・・・。
そしておもむろに流れる 訳のわからないBGM。 まずは幼馴染であるところの美人さんに 寝起きを起こされ、一緒に登校するところから始まる。 うわー。さぶーい。ベタ過ぎるー。
このゲームの主旨は 学園生活を過ごす中で 同級生や後輩や女教師などと仲良くなり 最終的にはアレをする。 というものであるようだ。 途中、いくつも選択肢が発生し その選択次第によって アレできたりナニできなかったりするわけだ。
とりあえず私は 登場してくる女性キャラクター全員と アレしたりナニしたりしようと思ったので 当り障りのない選択肢をチョイス。 すると、最終的には誰とも仲良くならず 普通の学園生活が平和に進行し そして終わった。
は? 終わり?! まだなにもしてないじゃない! 青春はこれからじゃない! アタイ、まだまだいけるじゃない!
どうもゲームというものに対して のめりこむということが出来ない性格なうえ 女性との駆け引きは苦手であるし なにより、あまりに青春しているこの物語は 私には眩しすぎる。鳥肌がたつ。 私はこういったゲームにストーリー性など求めていないのだ。 とりあえずカワイ子ちゃんとにゃんにゃんするという 目的を達成したい。最短距離で行きたい。 というか初っ端からそれで構わない。 にも関わらず、ゲームは延々と続く学園生活を映し出す。 選択肢が次々とポップアップ。 い、いつになったらアレしたりナニしたりできるのですか。 まだですか。 また選択ですか。 どちらの女の子と一緒に下校しますか?だと? 両方連れてけ! 白いうなじが目に入り思わず目を逸らした。だと? もっと食い入るように見つめなさい! あー。体育祭なんてどうだっていいよ! 保健室行こうよ!
女の子とアレしたりナニしたりしたい という情熱は驚くほどあるにも関わらず このゲームをクリアできる気が全くしない。
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