「硝子の月」
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2007年08月31日(金) <夕刻> 瀬生曲

「『永き者の寵を受ける御方』」
 若い男性の声が、殿堂の一族の長の名を呼んだ。
「なんじゃ?」
 いつものとおり長椅子に寝そべり水煙草をくゆらせながら、彼女は青年にゆったりと視線をやった。
「アルティアより通信が入っております」
「ふむ。『第一王国』の建国祭である故、な。あの子かえ?」
 心なしか気難し屋の彼女の様子に喜色が混じる。青年は「はい」と頷いた。
「お繋ぎ」
 彼女のその言葉は、青年に対してではなく、彼が持ってきた鏡に対するものだった。


紗月 護 |MAILHomePage

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