「硝子の月」
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何故そんなことを訊いてみる気になったのか、後で考えてみてもティオにはわからなかったが、とにかくその時彼はこんな問いを発していた。 「お前、俺のことどう思ってるんだ?」 アニス以外の誰からどう思われていようと関係がなかった少年の、おそらくは生まれて初めての問い掛け。どんな意味合いを含むのかなど本人にもわからないうちにするりと声になっていた。 「どうって……」 珍しくルウファが動揺したように口篭る。それを見て初めて色恋の意味でも取れるのだと気付き、彼女以上に動揺してしまう。 「ちがっ……! そうじゃなくて!」 慌てて説明しようとする彼の様子に、逆にルウファはいつものペースを取り戻したらしい。にっこりと余裕の笑みを見せた。 「気に入ってるわ。好きか嫌いかで答えるなら、間違いなく『好き』よ」 極上の、笑顔。 「まぁ、『好き』にも色々あるけどね」 それでも、面と向かって誰かに「好き」といわれたことなどない少年は顔を赤くする。 「どんな『好き』だと思った?」 「うるさい!」 くすくすと笑いながら顔を覗き込んでくる少女に背を向ける。同じ年頃の少女にからかわれるなど、腹が立つ。
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