「硝子の月」
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「『硝子の月』なんて、どうだっていいんだ」 少年は小さく呟く。 胸の奥にある小さな願いには気付かないふりをして。 ルリハヤブサだけが、それを見ていた。
「……何ですって?」 何かを懸命に押し殺した声で、赤い髪の少女は言葉を紡いだ。 「いや、だからさ、いなくなっちゃったんだって、勝手に! もちろん僕は止めようとしたとも! 止められなかろうと悟ってからは彼の欲求を速やかに叶えてやろうという歩みよりも見せた! しかし彼は僕を卑劣な罠に掛け…」 「それで何であんたはここにいるの?」 青年の説明を途中で遮り、ルウファは紅玉の瞳できつく彼を睨み据える。 「ふっ、やだなぁ、ルウファ。いとしい君を待っていたに決まってるじゃないか」 「とっとと探しに行けーっ!!」 げし! 「あ」 短い声を残して、足蹴にされた青年は窓の外に消えた。 (二階くらいならまぁ大丈夫だろう) グレンはとりあえずのんびりとそれを眺めていた。 「留守番一つまともに出来ないんだからあの馬鹿は! ティオもティオよ! 怪我人はおとなしく寝てなさいっっての!」 少女は烈火の如く怒りながら部屋を出て行く。 「あんたも探すの!」 「はいはい」 振り向きざまにねめつけられて、彼も素直にそれに続いた。
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