だだ争論

だだの日記

2008年09月15日(月) ありのままを抱きしめたら ありふれた言葉で泣いた

山陰地方をツーリング中、
温泉に入浴していたら、いきなり腰に激痛が走った。
稲妻が落ちたと思うくらいの衝撃。
座るだけで痛いし、立っていても少し体を動かせば痛みが伴う。
かなりまずい状況だと感じた。

時刻は土曜の夕方。
黄昏がせまる田舎道を飛ばして、病院を探した。
西の空は真っ赤に染まってきれいだったが、
見る余裕なんてまったくなかった。


交番にも駆け込んでようやく見つけた病院だったが、
休診日ということもあって、
ちゃんとした検査は受けられなかった。
でも、一応医者に診てもらえて、
少なくとも最悪な状況ではないらしいということが分かり、
少しだけ安心した。痛み止めの飲み薬ももらえたし。



「ま、どうにかなるっしょ」なんて、旅先では楽観的に構え、
困難にも、気持ちを鼓舞させて乗り切る僕であっても、
さすがにこの日の夜は、心細い夜だった。
今まで腰を痛めたことがないのが自慢だったし、
腕や膝よりも大事な箇所だと思ってたし。


差し当たって、この旅をどうするか。
次週の山行予定をどうするか。
これから心配なく山に登ったり自転車に乗れたりできるか。
そして、今後の自分について。

いろんなことを考えるほどに、不安ばかりが募る。


でも、そうした気弱な部分が覗かせるほどに、
今まで自分をよく見せようと着飾っていた
変なプライドとか強がり、虚栄心みたいなものが、薄れていくような気がした。



そんな状況のなか、翌日、某写真美術館に足を運んだ。
一通りの展示を見終わった後、
来館者の感想が綴られたノート(旅先でよくあるやつ)をパラパラとめくっていた。
そして、そのうちの一人の文章に目が留まった。

その方は今回が6年振りの一人旅で、
東京からの道中に感じたことがつらつらと記されていた。
そこに書いてあった内容は、
決して特別な言葉ではないし、修辞的に優れていたわけでもないが、
感じたことをそのまま言葉にした風で、とても心に残った。

旅を繰り返す僕にとって、当たり前すぎて気にも留めないようなこと。
齢を重ねるにつれて、失われてしまったもの。

今、腰を痛めたこんな心持ちであるからこそ、
心の扉さえ開けておけば、しっかりと心に響いてくるものがあることに
今更ながら気付いた。

* * *

旅の意義が、"どこへ行った"や"何を見た"ではなく、
"何を感じ"、"どんなことを考えた"かにあるならば、
今回はとてもいい旅になったんじゃないかと思う。


        (Title from『口笛どろぼう』by GOING UNDER GROUND)


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