だだの日記
2004年02月07日(土) |
ダンス・ダンス・ダンス |
僕の部屋には二つドアがついている。一つが入り口で、一つが出口だ。 互換性はない。入り口からは出られないし、出口からは入れない。 それは決まっているのだ。人々は入り口から入ってきて、 出口から出ていく。いろんな入り方があり、いろんな出方がある。 しかしいずれにせよ、みんな出ていく。 あるものは新しい可能性を試すために出ていったし、 あるものは時間を節約するために出ていった。 あるものは死んだ。残った人間は一人もいない。 部屋には誰もいない。僕がいるだけだ。 そして僕は彼らの不在をいつも認識している。 去っていった人々を。 彼らの口にした言葉や、彼らの息づかいや、彼らの口ずさんだ唄が、 部屋のあちこちの隅に塵のように漂っているのが見える。
村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」より
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