月と散歩   )   
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2002年03月01日(金) その後の、その後(改)

南の海に流氷が浮かぶのも、洒落てるな。

そう思い、砂浜から勢いよく 放り投げた。

…とその時。

「捨てるなーっ!!」

職場のおっちゃんが叫びながら走ってきた。
射点の立入禁止区域内の砂浜に入っていたので
注意しに来たんだな…。

「捨てたか?!」
「はい…でも…」
「どこだ? やっぱり俺にくれ」
「?」

―――

実はこのおっちゃん、息子が通う学校のPTA会長。
休憩中の雑談で、
以前、出張先から珍しいだろうと『雪』を学校にプレゼントしたら みんなとてもよろこんで…
という話をしていた。

その話を聞いて
親の考えることは、誰でもいっしょなんだなー
と、ちょっとうれしかったり。

流氷がある と
学校に連絡したら ぜひ欲しい ということで、慌てて後を追って来たらしい。
さっき、捨てる前に訊いたら「いらん」って言ったのに…。
さんざん笑った手前、みんなのいる前で貰うのはバツが悪かったのかな。
あとでこっそり…と思っていたら、
思いもかけず 僕が『放流』というシナリオに無い行動に出たので(苦笑)、慌てたんだろう。

―――

悪い足場と僕の弱肩が幸いして(笑)
流氷は、まだ砂浜から近い位置にいた。
波が寄せたときに、なんとかキャッチする。
おりしも この日の最高気温は22℃を記録(!)。
すでに元の半分の大きさになっていた『彼』は、
南の海の暖かさで さらに半分になっていた。

オホーツク海の砂は洗い流され、かわりに種子島の白い砂が付いていた。
僕は、それはそれでおもしろいと思ったんだけど
考えてみれば、これじゃただの『大きな氷』だ。
おっちゃんも ちょっと肩を落としてる。



…けどなんか、笑いが止まらなかった。

おっちゃんの慌て振りがおもしろかったわけじゃなく(それもあるけど)
それ以上に、この流氷の数奇な運命に想いを馳せると
自然と口許が緩む。


今頃 流氷は、好奇心いっぱいの子供達に 散々いじくられてることだろう。
きっと『彼』も喜んでいるはずだ。


…なにより、ウチの親父の想いも 報われたに違いない(笑)。

―――

後日談。

砂浜に向かう途中の電話は、おっちゃんからだった。
留守電にメッセージが残っていた。

それは息も切れぎれの、なんとも情けない声で

「捨てないで〜! おーい…捨てないでぇ〜…りゅうひょ〜…」

たっぷり20秒録音されたその声は、
聞くたびに 温かい笑いを呼び覚ます。


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