※・・・スミマセン、数日前にあんな話書いときながら、本日の某スポーツの結果に思わずツッコミ入れずにいられなくなりまして。 ほとんど推敲なしに書きました。一部不愉快な箇所があるかもしれませんが、あくまでギャグですんで、ご了承ください。ちなみに主役は波多野です。そしていつも以上に、蒲生さんの讃岐弁がメチャクチャです(T_T) 誰も本気にはしないと思いますが、一応事前に断っておきます。 この物語はあくまでもフィクションであり、実際の個人・団体・施設等には何の関係もございませんから!! ************* そもそも波多野の様子がおかしくなったのは、その日のレース後顔なじみの記者と雑談をしてからだ、と皆が記憶している。 「マジっスか!? ホントに日本が準決勝進出、決定したんですか!?」 「そう聞いてるよ。アメリカがまさかの敗退でね。韓国との三度目の正直だって、世間は大騒ぎになってるみたいだけど・・・」 「そ、そうなのか・・・見たいなあ・・・」 「見たいって・・・ああ、そう言えば波多野君て、もと高校球児だっけ?」 「ええ。あいにく甲子園には行けませんでしたけどね。何か胸が躍るなあvv」 そしてその日波多野は、平和島のレコード記録にコンマ1秒と迫るブッチギリの強さで勝利したものの、折角の勝利者インタビューでもどこか、気がそぞろで。 その理由を周囲が知ったのは、夜、選手宿舎でスポーツニュースを見てから。 ───ご多分に漏れず。 昔野球少年だった波多野は、王貞治の熱狂的大ファンであった。 「じゃ、何か? お前がやたら今日のレースに早くケリつけたがってたのって、一刻も早く宿舎に戻ってニュースでW●Cの結果を、確認したかったからなのかよ?」 「は、はあ、まあ、そういうことなんです、ハイ・・・」 浜岡がそう波多野に詰問したのは、夕食も終わり、ひとっ風呂浴びようと足を運んだ風呂場だったのには、果たして作意はなかったのか。 現に、周囲の選手は耳をそばだてて、2人のやり取りを伺っている。それが今日のレースで、波多野に負けた選手なら尚のことだ。 『オレはああいういい加減なヤツに負けたのか・・・』と言う呟きが、あちらこちらから漏れて来る。 「・・・あのなあ。まだ準優に進めるかどうかの瀬戸際だってのに、そんなことにうつつを抜かしてて大丈夫なのかよ?」 「だ、大丈夫ですよ。気合入りまくってますから」 どこか引きつった笑顔と共にそう答えた波多野だったが、異を唱える人間は必ず存在するもので。 「それはどうかな? もし日本が韓国に『3度目の正直』とやらで勝ちでもしたら、別の方向に気合が入るんじゃないのかい? 波多野」 「な、なにおう?」 いつものごとく、波多野に対してそんな小生意気な言葉を発したのは、洞口Jr.である。 その言い草自体は彼らしいであろう。が、わざわざ口に出さなくてもいい事柄でもある。 何故なら黙っていればあるいは、波多野は最終日に早く帰りたいばかりにわざと負けを重ねる、ということがありうるわけで。 ある意味それは、真剣勝負の上でならともかくも、わざと負けたりしたら許さない、と言う洞口Jr.の潔い気概をも、示しているのだ。本人には今ひとつ、自覚がないらしいが。 そして波多野にとって運の悪いことに、彼の負け逃げを断固許してくれそうもない男がもう1人、今の会話を聞きつけていたのだ。 「ほー、何やおもろいコト話しとるなあ? 波多野」 「が、蒲生さん・・・☆」 いつの間にやら背後に迫っていた蒲生が、ほとんど羽交い絞め同然に波多野に抱きついた。・・・満面の笑みをたたえて。 「そーいや、ワシの近所の連中にも数年前やったか、オリンピックの野球中継見たさに約束サボって後でエライ目に遭うた、ちゅうんがおったなあ」 「そ、そうなんですか?」 「野球好きにはああいう世界大会ちゅうて、たまらんもんらしいのお。決勝戦なら尚のこと。あいにくワシにはピンと来んわ。今でもあんましウチでテレビ見んし。 ・・・まーさーかー、とは思うけど波多野、お前、『だぶるー●ーしー』とかのTV中継見たさに、最終日のレースそこそこの時間で引き上げる、ちゅう算段でおるんやないよ、なああ?」 「ま、まさか、ですよ、それこそ。・・・はははははは」 「そ、か。そやったら安心したわ。ワシなあ、榎木やお前らとスリリングなレースするん、今節もめっちゃ楽しみに来たっちゅうに、逃げられたらどないしよー、思っとたんやー」 「そ、そんなこと、するわけないでしょ。か、考えたことも、ないっス。こ、こ、これっぽっちもっ」 「そやろーそやろー。今から決勝レースが楽しみやなー」 ───蛇ににらまれた蛙? ───イヤ、どっちかと言えば、少々気の弱い狐と、ぶ厚い毛皮を二、三枚かぶった狸の化かし合いじゃないか? 不運にもその場に居合わせた人間は、2人を見て皆そうツッコンだが、そろって心の中だけでとどめている。 下手にここで受け答えしようものなら。 そのままプロレス技にでも持ち込みそうな凄まじい迫力と共に、波多野に抱きついている蒲生の『感情』の矛先が、こちらに飛んでこないとも限らないではないか。 だから皆、一瞬だけでも不埒な考えに及んだ同僚に遠巻きで、心の底から同情するのであった。 蒲生の横で、ダラダラと脂汗を流す波多野は、だから気づかなかった。 自分の杞憂が馬鹿らしくなった洞口Jr.が同期の『危機』をあっさり見捨て、さっさと自室に引き上げていったことを。 そして───。 「ナイスタイミングっス、榎木さん。ホント、助かりました、蒲生さんに話つけて下さって」 「礼を言いたいのはこっちだよ。浜岡くんこそ、よく私に相談してくれたね。もし蒲生さんがこのことを知らないままだったら、きっともっと機嫌を損ねていたと思うから」 「みたいっスね、あの様子じゃ。・・・まあ、オレも少し考えすぎかな、とは思ったんスけど、念のためって言うか、釘刺しときたかった、っていうか」 物陰で同支部の先輩と『艇王』が、ひそひそと密談していた、などということも。 *************** かくして、波多野憲二は無事、21日の決勝戦にコマを進め、蒲生や榎木たちと熱戦をくりひろげたのであった。 尚、予断ではあるが。 気を利かせた幼馴染の澄が、わざわざW●Cの決勝戦を録画してくれたから良かったものの。 日本がキューバに劇的な勝利を遂げた、その決定的瞬間をタイムリーで見損ねたと知った波多野が、滂沱の涙にくれたのは───言うまでもないことであろう。 《おしまい》 −−−−−−−−−−−−−−−−−− ※まずは一言。 波多野ファン、ゴメン(平伏) イヤ、日本がW●Cの決勝戦にコマを進めたことも、優勝したのも、本来なら喜ばしいことなんですけどね。 そのせいで案外、折角の総理大臣杯決勝が盛り上がりに欠けたりしなかったろうなー? とか思ったら、何か書かずにはいられなくなりまして。 よく考えたら、波多野は昔野球してたんだったよな? とか思い出したら、どうしてもこんな方角にしか筆が進まなくなった次第です。ホントにゴメン。 あくまでもギャグだってことで、大目に見てやってください!!
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