moonshine  エミ




2003年01月20日(月)  『Trainspoting』 俺たちに明日はない

『Trainspoting』、これ、むちゃくちゃ面白かったよ!

 観る前は、
 自主制作っぽいダルダルさとか、
「話のつじつまなんて、クソくらえ!」みたいな、ある意味つくった側の独りよがり的なところのある映画だろう・・・
 と、予想してた。
 そういうとこも含めて楽しめたら、それでまあいっか、と思ってもいたし。

 でも、でもね、これ、すごくしっかりしてる!
 意味があるんだかないんだか、監督の趣味で入れただけのシーン・・・?
 て思えるようなシーンが連続したりするけど、実はぜーんぶ必然。
 すごく説得力のある展開!
 しかも、スピーディー! 90分ちょっとしかないんです。
 これ、素晴らしいと思った。タイトに、締まってた。
「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「タイタニック」の半分よ!(←と、見てないのにこんな言い方で比較するのは、やめましょうね。)
 ま、単に制作費が足りなくて、長く出来なかったのかもしれんけど。
 そうだとしても、この過不足ない感じはすごい。

「陽気で悲惨な青春映画」というキャッチコピー、まさにその通り。
 大きな挫折もないのに、仕事にも就かず、ドラッグに溺れる登場人物たち、でも、全然暗くない。
 だからといって、麻薬やってオレたちハッピー♪みたいな、投げやりな若さで煽る映画でも、ない。

 まじめに働いて、大きなテレビや家を買って、家庭をもって、それが幸せか?という疑問で映画は始まる。
 ヘロインでハイになっても、なんかダメ。
 セックスすら、救いにならない。
 家族や友達がいるのに、ちゃんとできない。
 スコットランドという国を誇りたいけれど、誇れない。
 自分にも自分のバックボーンにも、なにひとつ拠りどころがないんだね。
 主人公は途中で麻薬絶ちをするんだけど、「ドラッグをやめて、これで本当に退屈で刺激のない日々が始まった」というシーンがある。
 そう、ドラッグをやめたって、それで新しい道が開けたりしないのだ。
 そして、また中毒。
 仲間たちがドラッグに耽溺している間に、溜まり場にいた赤ん坊は誰にも世話されずに、死んでしまう。
 それを見てショックを受けて、ショックから逃避するために、またヘロインを打つ。
 この循環。なんていう、救いのなさ!  
 途中、仲間の一人がドラッグが元で死ぬけど、死ななかった奴らが幸せだとも思えないような、あの描き方。
 
 ラストもすごく良かった。
 主人公レントンは、一見、愚かで愛すべき青春に別れを告げて、新しいステージに走って行ったように見える。
「Trainspoting」という言葉には、「チャンスをつかむ!」というような意味もあるらしい。
 でも、ラストのレントンは友だちを出し抜いて、チャンスをつかんだ。
“美しい友情!”なんてわかりやすい薄っぺらい友だち関係は、この映画では全然えがかれないのだけど、
 ドラッグ中毒だったり、暴力癖があったり、どーも頭が足りなかったり、それでも
「しかたないよな。友だちだもん」
 という印象的なセリフを繰り返し言って、付き合ってきた友だちを裏切って、大金を手に入れたのだ。
 
 それが素晴らしい出発なのか? 
 それとも、そういうふうにズルくなることこそが、大人になるってことなのか?
 考えナシにやったことで、また仲間をふりきれずに逆戻りして、ドラッグやっちゃうんじゃないか?
「これからは俺も、大きなテレビを買って住宅ローンを組んで・・・」
 それでふつうの人々のような生活をするのだ、という最後の独白、 
 でも、それが本当に幸せなことなのか?
 映画を見てる私たちが、幸せって思い込んでる固定観念、
 まともだって思い込んでやってる、この今の生活って、どうなんだ?
 
 いろんな疑問が湧いてきて、
 とうてい単純にめでたしめでたし、なんて安心させてくれない終わり方だった。
 でも、妙にすがすがしい、見終わった感じのこれってナニ?
 
 悲惨。でも、暗くない。滑稽で、ばかばかしいけど、なんだかいとおしい。
 声高にメッセージなんて叫ばない、なんの主張もしない、
 安易な感動路線にも流れない、
 でも余韻を残して、ぼんやり何かを、ふだん考えない何かを感じさせる映画だった。
 
 これ、公開当時、話題になったよね。
 私は確か大学に入るか入らないかの頃だった。
 大学で出来た新しい友達が、かなりこの映画が好きで、その友だちが当時付き合っていた彼氏は、この映画のユアン・マクレガー風に頭を刈ったんだよね。
 そんな若い思い出もなつかしく切なく思い出した。

 さて、昨夜このビデオを見て興奮に浸ったため、またしても寝不足の月曜日だったが、今日は予想外の急ぎの仕事が入り、バタバタ。
 でも、なんとか時間内に片付けることができた。
(というか、時間内でひと段落着いたので、残りを先のばしにした)
 今日はちょっとでも早く、寝よう・・・。





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