翔くんのときどき日記

2002年08月19日(月) 新作(長編) 少しだけー

新作(長編)。そろそろ出来てきました。


・・・・が、どうもうまくかけてなくて。
変に結愛が人気になってしまったので、今までと違うタイプのヒロインを書くのに、気後れしているみたいです。

と、いう訳で。

一話を少しのせてみる事にしました。

「あ、これ読みたいっっ」という反応があったら、気合いをいれる事にします〜。

なお、序章はこちらです。




一.冷たい雨。生きてはいない街。

 切り裂くような冷たさが身に染みる。
 冬の空、誰もいない街。暗くとも、点いてもいない電灯。ゴーストタウン。
 バブル時代に乱立した郊外の住宅地。今では殆ど人が住んでいない街。
「さむい、な」
 誠哉は煙草の煙を吐き出しながら、人通りも車通りの無い幹線道路を一人歩く。
 こんな夜中にひとり歩いていたなら、普通の街なら警察に見つかれば職務質問されるかもしれない。
 しかしこの街では何も心配はいらない。誰も何もいないのだから。
「いっそ歌でも歌うか、おい」
 大きな声で叫んだとしても、苦情の一つもあがらないだろう。この街に住んでいる世帯数は百にも満たないというのだから。
 それでも誠哉はこの街が嫌いではなかった。孤独な死に逝く街。まるで自分自身のように感じる、街。
「は、幽霊でも出そうな雰囲気だな」
 呟いた言葉にばかばかしい、と内心思う。幽霊などいる訳もないし、いたとしてもこんな郊外の生きてはいない街には出ないだろう。
 その、刹那。
 遠目にひらり、と白いものが映った。心臓がぱくんと波打つ。
 気のせいだ。そう納得しようとして目を凝らす。だが、白は再びひらひらと辺りを舞っていた。
「確かめてやる」
 ごくりと唾を飲み込んで、ゆっくりと近付く。
 街の真中を走る幹線道路だけあって、かなり遠くまでが見渡せる。もっとも街灯の数が少ない為に――正確にいえば点灯している街灯が、だが――はっきりとは見て取る事が出来ない。
 幽霊の筈がない、と心の中で呟くが、この街に、しかもこの深夜に人がいる訳もない。いるとしたら、暴走族か何かろくでもない奴に違いない。
 もっともそういう誠哉自身の事は棚に上げているのだが。
 実際のところは風に飛ばされた洗濯物か何かが引っかかってはためいているか何かだろう。そうは思うのだが、なぜかそれが気になっていた。もっともどちらにしても、誠哉の家はこの先だ。そちらに向かうしかないのだが。
 白は、いくどかひらひらと舞っていた。近付くにつれてはっきりと姿が見えてくる。
「そんなはずは……」
 誠哉は小声で呟く。
 白は、洗濯物などではなかった。そこに確かに誰か立っていたのだ。体格からすれば恐らくは女性だろう。彼女の白いコートが風に揺られていた。
「まさ、か」
 本当に幽霊か? 喉まで出かけた言葉を誠哉は飲み込んでいた。言葉にしたら、それが現実になりそうな気がして。
 ここからではまだはっきりと確認は出来ない。ただ彼女はぴくりともせずに、誠哉に背を向けて、まっすぐに立ち尽くしていた。
 幽霊ではないとしたら、何をしているのか。深夜の街を女性一人で歩いているだなんて危険極まりない。もっともこの街では危害を与える相手すらいないのかもしれないが。
「いや、俺がいるか」
 ぼそりと自嘲気味に呟く。大学にいかず、かといっても定職にもつかずに、子供の頃からの夢を追いかけている。傍からみれば極つぶしも同然だろう。
 俯けかけたその顔を、しかし降ろしはしない。ここで俯いてしまえば、それを認めるような気がして。
 その、瞬間だった。
 まだ少し遠い場所にいる彼女が、不意に振り返る。
 本当は一瞬のうちだったのだが、まるでスローモーションのようにはっきりと見て取れた。
 白い。肌。
 きらり、と瞳が輝いたように見えた。ぞくりと体が震える。
 その瞳は紅い色を携えていたから。人の持つ瞳の色ではない。
「幽霊!?」
 身がぞっと凍える。
「……きた!?」
 彼女は不意に叫んでいた。ぎゅっとその手を握り締めているのが分かる。
 体がぴくり、と震えた。まるで力が抜けていくような気がする。
「いや、≪シェルベ≫で十分か!」
 彼女は声を荒げて、ぎゅっと瞼を閉じ、そしてすぐに開く。
 誠哉は胸の中が熱くなるのを感じていた。その背筋には冷たい感覚が走り抜けているというのに。
 殺される! 確かにそう思った。彼女は一歩もそこから歩いていないにも関わらず。
「≪レーテプピレ≫」
 彼女は叫んだ。
 一瞬の出来事だった。彼女の手が誠哉の目の前に踊っていた。
 彼女の手が誠哉の顔に触れようとした瞬間。
 ピタリ、とその手が止まる。
 静かな、綺麗な、冷たい声だ。誠哉はなぜかいま、そう感じていた。ぞくりと背筋が凍るような。猛獣に襲われる小動物のように身を固めたまま。
「違う?」
 だが、次の瞬間。彼女が困惑した声を上げていた。そこに冷たさはない。
「……お腹空いた」
 不意に彼女は呟いて、そしてそのままぱたん、と倒れていた。
 一瞬、誠哉の時間が止まる。何が起きたのかも理解が出来ない。
 目の前にあるのは、倒れて気を失っている少女が一人。先程までは気が付かなかったが、まだ二十歳は超えていないだろう。誠哉とさほど歳は変わらない。もしかすると、さらに若いかもしれない。
 白いコートに腰まである長い黒髪をまとわせて、誰も来る事はない路面に一人、見知らぬ少女が倒れている。
「なんだってんだよ」
 冷たい風が、誠哉の肌を撫でた。



「よぅ。目、覚めたか?」
 誠哉は、目を開けた少女に向けて、ゆっくりと話しかける。カップ麺をすすりながら。
「で、食うか? やきそばしかねーけど」
 声を掛けて、まだお湯の入ってないカップ麺を差し出す。
 少女は、憮然とした顔で誠哉を見詰めている。それもそうかもしれない。どこだかもわからない場所で、見知らぬ男が目の前に一人いるのだから。
「ここは俺の家だよ。あんたいきなり倒れただろ。さすがに真冬の夜空の下に、女の子一人残していくのは抵抗あってな。仕方なく連れて来たって訳だ」
「……そう。貴方が私を捕らえたの」
 少女はベットの上から、静かな声で告げる。澄んだ綺麗なソプラノの声。今井の奴の歌が似合いそうだ。誠哉はふと、そんな事を思う。
「捕らえたって人聞き悪い事いうな。むしろいうなら拾ってきたってとこだろ」
 おかしな事言う奴だ。誠哉は声には出さずに呟く。もっとも拾ってきたにしても外聞のいい言葉じゃないけど、とも思うが。
「安心しろよ。別に何もしちゃいない。そんな暇もなかったしな。あれから、まだ10分もたってねーし」
「そう」
 ぼそりと呟くように答えると、ちらりと自分の姿を眺めていた。本当かどうか確認したのだろうか。
 あの場所から誠哉の家まではすぐ近くだ。面倒ではあったが、自分のマンションまで連れ帰っていた。
「で、食うか? 腹減ったって言ってたろ。あいにくうちにはこんなものしかないけどな。食いたきゃ食ってもいい。で、食ったら出て行くなり何なり好きにしてくれ」
 さほど少女には興味もなさそうに告げると、彼女から視線を移し、目の前のギターへと向ける。
「……食べる」
 呟くように答えて、カップ麺の包装を解いていく。蓋を外した瞬間、ぴたりと彼女の動きが止まる。
「これはこのまま食べるの?」
「は?」
 彼女の何気ない問いに、今度は誠哉の動きが止まる。
「あんたカップやきそばの食べ方も知らないのかよ。どこのお嬢だよ、たく」
 誠哉は呆れて、麺にお湯を注ぐ。蓋を閉じて、彼女の前に置く。
「三分たったら中のお湯を捨てて。そのソースをかけて食べるんだよ」
「そう。わかった」
 彼女は頷くと、時計の針をじっと見ている。言われた通り3分きっかりでお湯を捨てて、ソースをからめて食べている。
「……変な奴」







ど、どうですか?? はぅぅ。

いい感じ♪ と思う方。ぜひ下からご一報くださいー。




反応をみて考えます(笑)

ではー


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香澄 翔 [MAIL] [HOMEPAGE]


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