2002年05月29日(水) |
ハリーの小さな大冒険 |
ふっふっふっ。橘さんから、面白いものを戴いてしまいました(笑)
後日、ちゃんと贈物に掲載するとして。 とりあえず公開しますっ(笑)
以下、僕にも魔法を使えたら 外伝「ハリーの小さな大冒険」煽りですっ(笑)
------------------------------------------------------------------ 「友情」、という言葉を笑いますか?
「愛」、と言われて引きますか?
忘れたふりをしていませんか? 本当はずっと、大切なのに。
もう一度、思いだしてみませんか。 それが、当たり前にあった時のことを。
一緒に。 彼と一緒に――
「きゅーっ」
小さいけれど、勇気がある。 幼いものでも、愛はある。
「きゅ、きゅーっ」
走るだけの力がある。 戦うための、心がある。
だから。
原作:香澄 翔 協力:相沢 秋乃 煽り:橘 睦月
ハートフル・アドベンチャー 「ハリーの小さな大冒険」
水面を通してだけの、愛だった。 彼女は大海を泳ぐハリセンボン。 おいらは地面に縛られたハリネズミ。 きっと一生、触れあうこともないだろうに。
「きゅ、きゅきゅきゅ!?(彼女が病気!?)」 「きゅー。きゅ、きゅ。きー(そうだ、ハリー。可哀想に、直らぬ病だと聞いたよ。人間が海に毒を流した。それにやられてしまったらしい)」 「きゅっ、きゅ、ききぃーっ!(そ、そんな、助ける方法はないんですか!?)」 「……くぅ。きゅきゅ、きゅー……(……うむ。ないことも、ないのだが……)」
ある日突然、ハリネズミのハリーにもたらされた、悲しい報せ! 愛しい彼女、ハリセンボンのハリーナが、不治の病に侵されたという!
「きゅ! きゅ、きゅうきゅーっ!(なっ! お、教えてください長老、その方法を!)」
長老の口から語られた、ただ一つ彼女を救う方法。 それは天守たちが守る秘宝、「奇跡の花」を煎じ、薬として与えることだという。
「きゅきゅっ! きゅー、くう、きぃぃっ!(よし! 待っていてハリーナ、僕が助けてあげるから!」
勇ましく立ち上がるハリー、天守たちが集うという、隠れ里を目指し! 走れハリー、がんばれハリー、愛しい彼女を救うため! おれはネズミじゃないんだ、モグラの仲間だ、名前が紛らわしいけどよろしくね!? つうか橘、ハリネズミって「きゅー」とか「くぅ」とか鳴くのかよ!?
都会は恐ろしいジャングルだ、車は行き交う、酔っぱらいは絡む。 「い、やーん! なにこれ、カワイイーッ!」 目を輝かせて駆け寄る女子高生も、今のハリーには立派な敵だ。 (や、やめろ、抱き上げるな! 刺すぞ!? 刺すからな!?) 「すっごーい! チクチクするぅ!」 (当たり前だろ!? 馬鹿か!? 馬鹿だなお前!?) 「目がくりくり〜! 癒し系ってカンジィ!!」 (俺はちっとも癒されねぇよ!)
車に跳ねられ、犬に吠えられ、おばちゃんに箒で追い回されて、それでも負けるなハリネズミ。鋭い針を輝かせ、鎧を纏った小さな勇者!
やっとの思いで辿り着いた隠れ里。だが、「奇跡の花」は大盗賊・石川五右衛門(一六代目)に盗まれてしまったという! もはや、迷っている時間はないっ! 彼女の命は後僅か。ハリーは走る、とにかく走るっ! 盗賊の手から、奇跡の花を取り返すためっ!
「すごいですすごいですーっ! 感動ですっ! わたしも手伝うですハリーと行きます! ふぁいと、おーっ!」
感動に瞳を濡らし、立ち上がるのか我らがヒロイン! 料理は旨いが味見はしねぇ、塩と砂糖を間違えるのはお約束だぜ!? しかし橘、結愛ちゃん語下手だなお前。(ほっとけよ)
大盗賊の手下どもをなぎ倒し、進む廊下に響く声っ! 「く、なぜこの僕が、こんなくだらないことをっ!」 「きゅ、きゅううーうっ!(く、くだらなくなんかなーいっ!)」 「ええい、きゅうきゅう煩いですよ、この下等生物っ!」 「きゅうっ!」 「痛っ! いっぱしに針なんぞ立てて、喧嘩を売っているんですか!? ドブネズミの分際で!」 「きゅ!? きゅきゅ、きゅううううううっ!(なっ!? 俺はドブネズミじゃねぇぇぇ!)」 言い争いつつ、先を急ぐ二人。 彼らを見守り、綾音は思った。 「凄いわ冴人。ハリネズミと意志疎通させるなんて……」
しかも同レベルだよ、冴人さん。
胸の奥が、限りなく熱い。 倒れても倒れても、前を見ることができるのは、支えてくれる、仲間がいるから。
「なっ! まさか、こんなに人数がいるなんて!?」 思わず立ち止まり、小さく舌打ちする綾音。 頭領・石川五右衛門(一六代目)の居る部屋までの道のりは、無情にも敵で埋め尽くされていた。 「きゅう……(そんな……)」 もう、駄目なんだろうか。 ハリネズミごときがどれほど頑張ったところで、奇跡の花は得られないのか。 しょせん、ハリセンボンとハリネズミ、最初から叶わぬ恋だったのか。
項垂れるハリーを、けれど抱き上げる手があった。 軍手に包まれた手で(何せ直接触ると痛い)、冴人はハリーを掴み上げる。そして、不敵に眼鏡を輝かせた。 「ここは我々に任せて、お前は先に行けっ!」 「きゅう!? きゅきゅ、きゅうううぅぅ!?(冴人!? でも、それではお前たちが!?)」 「ふっ。下等生物に心配されるほど落ちぶれてはいない! これぐらいはどうということありませんねっ」 「きゅ、きゅう……(さ、冴人……)」 小さく鳴くハリーを握り直し、冴人は大きく振りかぶった! 「いっけぇぇぇっ! ただのドブネズミではないと思い知らせてやれっ!」 ぶんっ! 冴人の手が大きく唸る、しなる! ハリーの輝く丸い身体が、悪党共の頭上を飛んでいくっ! 「きゅ、きゅううううううううううううううっ!?(い、いやああ(略)ぁぁぁっ!?)」
高速で飛んでいく銀色の友を見送り、冴人はふと笑った。その肩に、綾音が手を置く。 「冴人」 小さな笑みを交わし合う二人。綾音は、ぼそりと呟いた。 「アンタ、わたしを道連れにしたわね……?」 二人の前に迫る、敵、敵、敵! どいつもこいつも、やる気満々! 細い指先で眼鏡を押し上げ、冴人は逃がさん! とばかりに綾音の肩を叩き返した。 「ははは。当たり前ですよ。私は貴女の智添じゃないですか。生きるも死ぬも一緒ですよ!?」 ギラリ。 眼鏡の奥で、クールな瞳が熱く輝く。 「お、鬼!? あんたなんか鬼畜よぉぉぉっ!!」 「貴女にだけは言われたくありませんねっ!」
敵をかわし、敵を倒し、生き残れるのか名コンビ。 「はふ〜。綾ちんも冴ちんも、仲が良いですぅ。仲良きことは美しきかな、かな♪」 いや、結愛ちゃん。 あれはきっと、本当に仲が悪いんだよ……。
友に助けられ、勇気を振り絞り、愛のため。 ついについにここまでやって来た。 広い部屋に佇むのは一人の男。
その手に煌めく日本刀。 芸術に等しい、その輝きは。 まっすぐハリーに向けられていた。
「ふ。つまらぬ物を切ってしまうぞ」 「……(いや、そんな宣言されてもよ)」
傷つき、例え何度倒れようとも。 そうさ、僕には愛がある。溢れる勇気を力に変えて!
「きゅうううう! きゅっ、きゅうううう!(はああああ! いざ、食らえぇぇぇ!)」 「何!? は、ハリネズミが見事に丸く……! ぐは!?」 「きゅきゅうう! きゅぅぅぅんん!?(ハリー、フラッシュ! 刺さるわよ?)」 「ぎゃ、ぎゃああああああああ!!」
男の手から、日本刀が落ちる。 ハリーが、床に転がった。 誰かが、駆け寄ってくる。
「ほえぇぇ! これが奇跡の花ですかぁ!」 ハリーの三倍ほどもありそうな植木鉢。 そこに植わった花を見て、誰もが感嘆の声をこぼした。 「綺麗ね、とても」 綾音の言葉に、ハリーは誇らしげに針を震わせる。
見えるはずだ、貴方にも、貴方にも。 美しく、儚げに、けれどしっかり根を張るこの花が。 ハリーとともに、彼らと一緒に、長い旅に出た貴方には、見える。
美しく咲く花が。誇らしい奇跡が。
「ふん。さっさお帰りなさい、下等生物」 「きゅう!」 踵を返し、男は去って行こうとする。その背を、ハリーはじっと見つめた。 いつしか生まれた友情。 この想いに、嘘はないのだから。 彼女とだって、心通じる時がくる、きっと――
「きゅ、きゅううううう〜〜ぅ(あ、ありがとうみんな〜〜ぁ)」 ありがとう、僕、もう行くよ。 大切な人が、待っているから。 涙に濡れた顔を、見せたくはないから。
アスファルトの道路を、転がるように駆けていく小さな身体。いや実際、転がってるんだが。 その姿が完全に見えなくなるまで見送って、綾音はふと笑った。 「行っちゃったわねぇ」 「せいせいしますよ」 前を歩く男の声は冷たい。込み上げる思いとは裏腹に。 「そんなこと言って、本当は寂しいんじゃないの」 「ふん」 眼鏡をかけなおす、その仕草に紛れて。彼は一度だけ、振り返った。 「冗談じゃありませんよ、あんな下等生物」
寂しくはない。 だって、僕らは仲間だから。 きっといつか、また会えるから――
息苦しいと思ったことはありませんか。 信頼という言葉に、怯えていませんか。 素直な言葉を、忘れたふりをしていた言葉を。 もう一度、手にしてみませんか。
ここに仲間がいます。 心安らぐ、光があります。 ワクワクさせる、冒険があり。 貴方を抱く、愛がある。
ハートフル・アドベンチャー 「ハリーの小さな大冒険」
ハンカチの用意はできているか!? ついでに腹筋も鍛えておけっ! 貴方は今、感動のエンディングを知る!
近日公開――
してくれないかなぁ(笑)。
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注意(今更だが)
・この煽りは、原作である「僕にも魔法が使えたら」とは一切なんの関係も因果もありません。 ・香澄さんが書いたんじゃないので、責めても無駄です。 ・橘が書いたんですけど、責めたらイヤです。 ・冴人さんが壊れているのは、疲れているからです。そっとしておいてあげてください。 ・主人公が不在ですが、あまり気にしないでください。
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