ソルトレーク・シティ冬季五輪が近づいてきたが、私は2人のスピードスケート選手に注目している。 1人は堀井学。29歳。かつて日本短距離陣のトップ選手として活躍し、リレハンメル五輪では銅メダルを獲った男。しかし長野では、突如世界の主流になったスラップスケートへの対応が遅れて惨敗し、悔し涙に暮れた。あれから4年。同じ五輪の舞台を目前にして、堀井はリベンジに燃えている。今季W杯での表彰台こそないものの4位や5位での入賞は度々。差はわずかで、本番での表彰台も射程圏内だ。 2人目は武田豊樹。今季第一人者に踊り出た遅咲きの27歳。今月9日のW杯(カルガリー)では500mで世界記録にコンマ3秒と迫る34秒62で初制覇した。長野五輪代表漏れのショックで一時引退。競輪選手を目指すがこれも失敗。その後スケートの縁で橋本聖子参院議員の秘書になるが、この時「あんた、まだ競技者として死に切れてないでしょ」と言われ、98年に競技生活を再開。エース清水の練習パートナーとなり、力をつけた。 ともに長野で味わった屈辱を、4年後ソルトレークで晴らす・・・。そんな姿を見てみたい。
精密機械、修理中(12/13)
日本スケート陣のエース・清水宏保が腰痛で今季絶不調を極めている。肉体を精密機械のように限界まで研ぎ澄ます選手だけに、一旦壊れるとなかなか修正が効かない面もある。 清水は、体内にある鋭敏なセンサーで筋肉と対話する選手だ。これは野球のイチローと共通する部分でもある。先日のイチローの帰国記者会見でトレーニングの開始時期について問われた彼は「体が要求すれば」と答えた。しばらく魚を摂っていない時に食べたくなるように、彼らはトレーニングを食べて生きているのだとこの時思った。 修理中の精密機械・清水の体も今、様々なものを要求しているに違いない。しかし、その要求が多ければ多いほど、それをこなせないフラストレーションも大きなものになる。 これまでひたすら上だけを見て限界を目指してきた清水。彼は今、違う意味での肉体との対話を繰り返しながらもがいている。一刻も早い修理完了を待ちたい。
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