つたないことば
pastwill


2005年09月01日(木)  バイバイ 長い夢

ああ、元より。これは長い夢だったのかもしれない。
がらんどうになった部屋を見て、ふとそう思った。
あの男は何も残していかなかった。
家具も、衣服も、その気配すらも、すべて消えた。
押入れの中にあの子の姿さえ見つけられず、ただ応接間で
あったはずの部屋で呆然と佇む。定春はどこへ行ったのか。
何の痕跡もなくなった部屋は気が狂いそうになるほど静かで
寒い。暗い。この家ではそんなこと感じた事なかったのに。

「本当にいなくなっちゃったんだなあ」

呟いても返事は返らない。
外の喧騒だけが酷く耳につく。

うるさい、うるさい、うるさい!
本当に聞きたいものは聞こえやしないんだ、いつだって。

がらら、と戸を閉めて乾いた音がする階段を下りる。
もうここには来ないだろう。そんな気がする。

バイバイ、長い夢。
きっとまた夢見てやるから。
どこかで。



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