つたないことば
pastwill


2002年04月17日(水)  温かな手

温かい、とても温かい手だった。
僕はその温もりが大好きだった。
伝わる気持ち、流れる命ぜんぶ教えてくれる手だった。
ある日突然その手は冷たくなった。
そうしたのは他でもない、その温もりを与えてくれる一人だった。
手は冷たくなって、何も伝わらなくなって、命も流れてなくて、
その人の手は赤くなって、赤く赤く、
温もりは消えてしまった。
いつかきっとなくなってしまうものだった。
あの人はそれが怖かったのかもしれない。
消える前に自分で終わらせた。
何の前触れもなく消えることを恐れて。
弱い弱い自分を守るために。

温かい手だった。
もう冷たくなった。
もう消えてしまった。
あの手は赤く染まっていた。
僕は泣いていた。
伝えようと思った。
流し続けようと思った。
温かな手を求めて。



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