| 2003年01月10日(金) |
スイート・ホームタウン |
いつも明かりが灯ってる。 夏には夏のあたたかさ。冬には冬の優しさがある。 帰れば落ち着くそこは、どんなに時を重ねても 変わらない。世間様に遅れを取るなと改装を施した その家はそれでも、初めて目を開けたあの日のまま。 初めての色。初めての匂い。初めての思い出。 その家でたくさんの初めてを経験した。 目を閉じればまだ幼い自分が当たり前にいる。 階段を駆け足で上って、手すりで滑って着地。 ピアノのすぐそばには柱時計。もう何年も動かないはずの その時計が一回だけ鳴った時はさすがにビビッた。 長い廊下を歩けば代々受け継がれて来た自分の部屋。 今の方が断然格好いいけど。それでも愛した自分だけの 秘密基地。それからちょっと憧れた両親の部屋と いつも一緒にテレビを見てた祖母の部屋。 そう、いつだって産れ育った家は当たり前に 自分を受け入れてくれる。そしてたくさんの気持ちを 教えてくれる。いっぱい笑っていっぱい泣いて。 大切な人との永遠の別れも、やっぱりこの家。 暖かくて優しくて、だからこそ切なくなる大切な家。 今年はもっと頑張るからって手を合わせ、 寒さに震えて電車を待つ。そういえば走り出す電車から チラッと見える筈。そう思い、暗い窓の外目を凝らせば いつだって出来の悪い子供のための、人待ち顔の姿が見える。 不確かな時刻表に遠慮がちに手を振るその姿に 鼻がつんとなる。あの明かりがずっと消えないように。 あの明かりを目指せばいつだって帰れるから。 小さくなる影に声を殺して、シートに深く座って 寝てしまおう。あの日の皆の夢を見よう。 つく頃きっとまた一つ元気になってるはず。
|