衛澤のどーでもよさげ。
2009年12月14日(月) てんさい。

私が参加させて頂いてます幾つかのSNSのうちの一ツ、某SNSで「好きなP紹介バトン」(仮)というものを頂きまして回答したのですが、そのSNSで交流してくだすっている人とその外で私と関わる人とでは層が違うようなので、転載してみます。
SNSの人はみな共通言語というものがあって、特に説明もなくいきなり書き出して大丈夫だったのですが、それがSNSの外では何処まで通じるのかな、という興味もあります。

改めまして、「好きなP紹介バトン」(仮)。

※便宜上「P」となっていますが、P名を持たない人もどうぞ。
(註:「P」とは「プロデューサー」のことです。某動画サイトでは秀れた楽曲や動画を発表する投稿者には特にP名を与える慣例がある。動画のタグに「○○P」とあるのはその動画を投稿した人のP名。)
※ボーカロイドを持たないP(PV師等)もどうぞ。
※暫定版なので、お好きに質問追加どうぞ。

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■簡単に自己紹介してください
片田舎のしがない三文文士。喰うのは速いが書くのは遅い。

■今回語るPを簡単に教えてください
ニコニコ動画での名を「わんだらP」、そのほかの場所では概ね「F.Koshiba」と名乗っておられる、渋好みの曲をつくるアーティストかつVOCALOIDプロデューサー。
音も言葉も充分に研いでから衆目の前に出す。その周到なことに気付く人は稀れなのかもしれないが、一旦気が付けば目を離せなくなる秀作のつくり主。「伝説のKAITOマスター」なる称号を与えられている。
主にKAITOを主唱に使うが、ほかに初音ミク、がくっぽいど、巡音ルカと3人のVOCALOIDを使う。
作詞、作曲、調声以外に小説を書いたり絵を描いたりもする。ときどきネタも繰る。生真面目な風でいて、案外お茶目さん。

■そのPの代表作は?
「wanderer」(sm1550571)。



生まれはインストルメンタル、後に歌詞が付き編曲が変わり、女声ヴォーカルによって歌唱され、その後に男声ヴォーカルによる歌唱、メモリアルエディションの成立、更に編曲が改められ……このように多彩に変遷した曲はほかに見られない。これだけ手をかけたということは、おそらくつくり主たるわんだらP氏御自身に、この曲についての特別な思いというものがあるのではなかろうか。
強い思いが詰まったこの曲がより多くの人々に知られることを運命づけたsm1550571が氏の代表曲と言って差し支えないものと考える。氏は「伝説のKAITOマスター」であり、氏が紡ぐ楽曲の上で遙か旅行く者として知られることとなる旅KAITO(氏がこのように呼ぶ)の、その旅の原点でもあるのだから。
また、「わんだらP」というP名の由来となった曲でもある。

■そのPを知らない人は、まずどの作品から視聴するべきでしょうか?
やはり「wanderer」(sm1550571)か。
氏の原点であること、スタンダードな4拍子であることから考えてこの曲から。初めての人にも馴染みやすいのではないだろうか。いきなり変拍子の曲を聴かせて吃驚されてもちょっと困る(氏自身が「万感吟遊」(ショート版:sm1632132)の投稿者コメントで「変拍子のため馴染みの薄さから受け入れられないかもしれませんが」と述べている)。
聴かせる相手がちょっとした通好みであったり渋好みであったりするなら「万感吟遊 ピアノアレンジ」(sm3996446)を。



■最初に視聴した、そのPの作品は何ですか?
おそらく「そよぐ真昼の歌」(sm2141441)。



「おそらく」というのは、「VOCALOID KAITO」を知ったばかりの私は「KAITO」タグの再生数の多いものやネット上の話題に多く上るものをとにかく片っ端から聴いていて、誰がつくった曲かということを確かめてはいなかったからだ。
それから暫くして、ようやく「自分の好みの曲調と調声」というものが判りはじめた頃にこの曲と「千年の独奏歌」(sm3122624)を知り、「千年〜」も好きだけどこっちのがもっと好きかな、と思っていたという記憶が薄らとある。

両曲の決定的な違いは何処にあったか、というと、誤解を怖れずに言うなら「歌謡曲っぽさ」だったと私は考えている。
「千年の独奏歌」からはプロの匂いがした。細部に施す遊びや趣向がプロの仕事で、編曲や仕上げ方はヒットさせることを狙った「歌謡曲」の様相で、華やかですらある。なるほどこれは誰からも好かれてさっさと殿堂入りするだろうと思えた。

対して「そよぐ真昼の歌」にはその華やかさというものはおよそなかったが、一日中プレイヤのリピート機能に任せて際限なく繰り返して聴いていても飽きもせず厭にもならない、味わい深い曲であり、KAITOの南方風の謡い方となめらかな声は心地よかった。長い時間聴いて疲れるどころか、じわじわと味が出てくるのだ。ほほうと感心する私が、氏の曲が「スルメ」だと言われていることを知るのは、もう少し後のことである。
多くの消費者に媚びず、しかし丁寧なつくりの「そよぐ…」の方が私には好もしかったのである。

■そのPにハマったきっかけ、理由は?
きっかけは「わだつみ」(sm2768013)。



毎日毎日「KAITO」タグを放浪して「KAITOの歌」を何百曲と聴いて、だいたい「KAITOの声」と「その声でうたう詞の内容や曲調」の傾向が判ってきた頃のこと。それまで聴いたものの何れとも、だいたい判った傾向とも、まったく違うKAITOに出会った。それが「わだつみ」だった。

張りのある太い声、よどみない発音・滑舌、謡曲や演歌の技法が混じった歌唱、太鼓の低い音が取る海洋を表しているのだろうリズム、鳴ってほしいところで盛大に鳴る銅鑼(シンバル)、それに何だ、この詞の語彙の豊かさと語選の的確さ、仕上がりのうつくしさは!……それまで出会ったことのないKAITO=わだつみさまの大きな逞しい手で喉首掴み上げられたような気分だった。それは一視聴者、というよりも、つくり手の端くれとして感じた衝撃であり畏怖であったと言える。
すごい曲だ、誰がつくったんだ!……私はこのときはじめて「誰がつくったのか」を確かめ、「わんだらP」というP名を知ったのである。

P名を知れば当然マイリストを覗くことになるのだが、覗いてみて判ったのは「ああ、『wanderer』や『そよぐ真昼の歌』の人か」ということだった。ほかにも氏の曲は幾つか聴いたことはあって、「わだつみ」がはじめての出会いではなかった。
そうして氏の曲をすべて一ト通り聴くことになるのだがそれを通して、作品に共通してつくりが丁寧であること、一聴して直ぐ判るほど浅い作品はつくらないこと、言葉の研ぎ方が非凡であることなどが判り、職人気質の制作姿勢が感じられて、私はこの師匠に一生着いて行こうと思ったのだった。

■あなた自身はそのPの作品の中で、どれが1番好きですか?
「1番好き」ということはただ一曲きりを択ばなくてはならないということなのだろうが、それは無理というものだ。だが、何とかできる範囲で絞り込んでみよう。

「コンドル」(sm4916562)

フォルクローレ風変拍子、不思議なコーラス、落ち着きと確固たるものをはらみ凛としたヴォーカルの声、平易な言葉を択びながら多くの人が言おうとしてなかなか言えぬことを表す詞、心臓をわし掴みにされる思いだ。
この曲には思うところ多く、題材に取らせて頂いて物語を書いてみたいという気持ちまで、書く書かないは別にして、持っている。

「日照雨」(sm7908362)

音の渦、言葉の妙、ヴィジュアルの力。この曲はほかの誰がどんなに模倣しても似たものはつくれまい。感性の豊かな人ほどこの曲の影響を受けているに違いない。絵筆を執ったり物語の筆を執ったりした人は数多いと聞いている。
iPodに歌詞を入力してもこの曲だけが文字化けしてしまうのは何故か。この曲こそ詞を味わいたいというのに。
(註:「日照雨」について……F.MEMO(F.Koshiba氏ブログ)より)

「wanderer」(sm1550571)
原点だから。
それから、個人的に氏にアレして頂いたということもあり、「wanderer・改」は外せぬところ。大人になったKAITOも恰好いいしね。

「わだつみ」(sm2768013)
あの衝撃は忘られぬ。

無理やり抜き出したこの四曲、順位はつけかねる。

■あなたがそのPに惹かれる理由は?
「自分の辞書」を持っておられる。ほかの誰とも同じでない、御自分だけの辞書を。しかもその辞書は収録語数が怖ろしいほど多い。このような御仁を、私は好きにならずに、尊敬申し上げずにいられません。
逃げぬ・媚びぬ・諦めぬという姿勢が御作のみならず投稿者コメントやブログなど、お書きになるものを総合して或るいは端々から窺える。一ト言で言うなら「ストイシズム」でしょうか。ぶれない己れと、それから逃げない己れ。あやかりたいところであります。

■そのPのファンをしていて嬉しかったことは?
氏の曲動画を視聴するに際し、動画コメントに言葉のうつくしさや味わい深さについてのコメントが見られると、まだ日本語は、母国の言葉は滅びずにいられるのかもしれぬ、と思えること。

■あなたがしているファン活動があれば教えてください(例:毎日巡回している、PV作った等)
マイリスト巡回はファン活動だったのか。それはすべからく。
ニコニコ動画アカウントを持たない人やブロードバンドに恵まれていない人には氏から頂いたmp3などを収録したCDを差し上げています。

■ファン活動の際に心掛けていることは?
相手がいる活動の場合は(聞けとか見ろとか)、無理強いしない。
自分の日常活動に支障を与えない。
氏御自身に迷惑がかからぬように(かけちゃったこともあるけど)。

■そのPについて、何かもえた(萌えた/燃えた)エピソードがあれば、教えてください
・ラーメンタイマーロックしました(「万感吟遊(FULL)」(sm1715802)動画コメント)
・赤福パフェとか食べてたらいい(F.MEMO 08/05/10)
・無限ぷちぷちのメイド編、幼なじみ編、ツンデレ編で、たまに出るであろうセリフを、「裏の説明を見なくても予想できる自分がちょっと悲しかった午後」(F.MEMO 08/07/02)。
・もっと思い切った 若作り 音作りに励みます!(「軍神オーディン」(sm7685347)投稿者コメント)

■「ああ、自分はつくづくそのPが好きなんだな」と思う瞬間を教えてください
ファン歴18年の或る音楽ユニットのニューアルバムを買ったのだが、まだ封も切っていない。同ユニットの、世間では入手困難と言われているライヴチケットも取れたのだが行く気が芽生えず友人に譲った。数年前、腹を切った(手術した)直後でも平気で行った彼等のライヴ……もしも氏がCDを手売りなさると仰るならば直ちに馳せ参じる気満々なのに。

とか思っている自分に気づいたとき。

■そのPと面識、交流等はありますか?
えー……人数が少なく特定の人のみがおられるSNSですから、えいやっと白状致します。
(と、某SNSでは或るできごとについて書かせて頂いたのですが、その外側で大っぴらに語ってしまうのは如何なものかと思う気持ちもまだありますので、この辺りはさくっと削って中略とさせて頂きとうございます)
……こういう次第で私の手許にやってきたのが「wanderer・改」のmp3ファイルでした。
(更に中略)
などと錯乱しつつ有難く有難く拝受致しました。

これが氏と私の、唯一のやりとりであります。

■あなたが思う、そのPの1番の魅力は?
ストイシズムとお茶目の同居。

■最後に、Pへ一言
有難うございます。
御身御大切に。

これ以外に何を言えと言うのか。

■次に語りを聞いてみたい人を挙げてください
語りたい人が、語りたいだけ、語ればいいのだと思います。
どなたさまも御自由に。

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■ほかにも好きなPはいるのですが、誰より好きなのがF.Koshiba氏―――わんだらPなので、このように回答させて頂きました。あまり語らない程度にとどめておいたつもりですが、何か語ってるっぽいなと転記しながら思いました。

■F.Koshiba氏公開マイリスト:VOCALOID_わんだら
できることなら動画サイトのアカウントを取得なさいまして、F.Koshiba氏の曲を、できるだけいいヘッドフォンを使って、聴いてください。氏の曲は、後からきます。


エンピツユニオン


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