衛澤のどーでもよさげ。
2006年08月14日(月) ヲすすめ映画。

映画好きの甥っ子にDVDを借りて、いま更ながら「キル・ビル」と「キル・ビルVol.2」を二日に分けて観ました。ずっと観たい観たいと思い続けて早や三年ですか。我ながらのんびりしています。やっと観た率直な感想は。
うっひゃー、派手にデタラメ大爆走だ!
これがQ・タランティーノ監督の「ファンタジイ」なんだなと妙に納得しました。多くの日本人が思っている「ファンタジイ」とは大きくかけ離れてはいますが、「ファンタジイ」とは本来そうしたものですしね。あまりにもあんまりなデタラメ振りが爽快な怪作。
なんてことは三年も前に大勢が言ったことなのでしょうが、やっぱり言いたい。

元々は一本のシナリオだった「キル・ビル」と「キル・ビルVol.2」。タランティーノ監督御自身が仰っているように、二作に分割して正解だと思いました。前半は圧倒的なデタラメ振りを愉しむ躍動的パート、後半はじっくり味わって感じる叙情的パート。ごくごく素直に、何も考えずにただ愉しいのはやはり前半。

鮨屋に身をやつした刀匠かつ剣の達人の服部半蔵しかも沖縄在住、というだけで充分デタラメ過ぎるのだけど、それにテレビドラマ「影の軍団」シリーズで忍者の頭目服部半蔵を演じた千葉真一氏を配してしまうところにタランティーノ監督の親日振りとよく理解した上でのデタラメ振りが窺えます。これを一番よろこんでいるのはやはり日本人の観客だったのではないでしょうか。
もうちょっと踏み込んで更にマニアックなのは、映画「少林寺三十六房」の主演俳優リュー・チャーフィー(=ゴードン・リュー)を、主人公ザ・ブライド(ユマ・サーマン)の功夫の師匠役に据えているところ。白髪白髭の仙人のような容貌の師匠が地面から軽く跳躍してザ・ブライドが振るう剣の上に乗っかってしまう場面などは「三十六房」を彷彿とさせます。

徒手空拳アクションが好きな私はこれ等の部分を堪能したのですが、それより何より、前半後半通して最も強く印象に残ったのは、どうしてもゴーゴー夕張(栗山千明)の存在。
やくざの用心棒であるミニスカート鎖鉄球女子高生、というだけで滅茶苦茶なデタラメなのに、その上名前が怪しげな日本名「ゴーゴー夕張」通称「ゴーゴー」。劇中ではこの名を誰もが真顔で呼びます。ここまで徹底してデタラメされたら何も言わずに受け容れるしかありません。私は若者言葉がどうにも好かないのですが、こういうものを目の当たりにしたときにはこう言うしかないのですね。「あり得ねえ」と。
で、この日本のヤクザのヨージンボーのジョシコーセーが使う鎖付き鉄球の扱い方は、中国の縄標(鎖や縄の端っこに手裏剣のようなものが付いた武器)のそれなのですね。ということが判るのはヲタクだけかーあっはっは。

という風に、細かいところを沢山観てヲタクっぽく愉しむのもよし、何の予備智識もなく観賞して怒濤の迫力に圧倒されるもよし、デタラメ振りを逐一指摘して意地悪に観るのもよし。ぼんやり観ていても後々まで記憶に残る作品でしょうから、ときどき思い返しては細部に感心したり巧妙さに敬服したりできるでしょう。まだ御覧になっていない方はいまからでも御覧になることをお勧めします。
でも、この作品が嫌いな人も沢山いるのだろうとも思いました。それくらい灰汁が強いです。

前半後半通して観て一番驚いたのが大葉健二氏が出演していたことでいまでも坊主なんだなギャバン隊長、と思ったなんてところが如何にもヲだなと自分で思いました。


【今日のカウントダウン】
もう幾つ寝るとライヴの日。


エンピツユニオン


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