2005年10月27日(木) 現実と現実性。
よくある「フィクションの、事実に即していない部分」が事実に即していないことを前面に出そうとして、事実に即したものを書くと「リアリティがない」などと言われてしまうことが往々にしてあります。決して稀れなことではなかったりもします。
つまり、現実を現実のままに書くと「現実性がない」と言われてしまう訳です。
「事実は小説より奇なり」と言うけれど、そうでなければ納得しないのが読者であり、読者を満足させなければならない編集者というもののようです。あまり突飛なことが現実に起きると「まるで小説みたい」などと驚くけれど、さほどドラマティックでもない、小説としては意外と言えるあっさりとした展開が小説の中に起きても「おもしろくない」ということになってしまう奇怪な現象。
小説に必要なものは「現実」ではなく「現実性」なのです。現実に起きることがどれほど奇怪な事象であっても小説の中で現実性があるならそれは「現実性があること」なのです。
現実をそのままに伝えようとすると「現実性がない」ものになり、現実性を持たせると「現実」から遠ざかってしまう。短絡的なことを言ってしまえば「うそをつく」ことが「現実性」を生み出すということです。
こんなことはいま更言わなければならないような重大なことではなくむしろ当たり前のことなのですが、それでも虚構を通じて実際を伝えたい者には大きな壁なのです。
【今日の感心】
御菓子メーカー所有の球団が優勝してチョコレートを無償で配っていて、その球団監督の名前が「バレンタイン」て、ようできた話やな。これは「現実性」? それとも「意外性」?