ウインドミルって御存知ですか。ブレイクダンスの技のひとつで、床の上で身体を裏表ひっくり返しながらくるくる回転するやつです。この説明は判りづらいと思うので、前述の「ウインドミル」の文字のリンクが切れていなかったらそこの説明を見てください。
……わし、これはダンスの技ではなくて床体操の技だと思うんですけどね。
さて、昨夜わしは
関西地域では深夜枠にも関わらず視聴率30%越えの大人気番組(他地域ではそうでもないらしい)で、「常々家族にバカにされているので何か一点で構わないから秀でたものを身につけて皆を見返したい。特に自分の次男は自分を見下している。彼が最近習得したウインドミルを自分もできるようになってぎゃふんと言わせてやりたい」というお母さん(四〇歳)が何とかウインドミルを習得して次男と対決するまでをリポートしているのを見ました。
カンケーありませんが、わしは常々、思わず「ぎゃふん」と口に出してしまうような事件に出会ってみたいと思っています。案外口にしませんよ、「ぎゃふん」なんて。
このウインドミルという技は学校体育の評価が五段階で「五(最上)」が続いているという身体能力優秀な現役学生でも何とかできるようになるまで三箇月はかかるという難技。素人がやるには筋力をつけるところからやらないといけない訳で。毎日ウエイトを使った運動で筋力向上に努めているわしも、この技は疎かこの技の前段階である「
チェアー」という姿勢を維持することすらできる自信がありません。
それを「運動」というものから遠ざかって十数年の四十路のお母さん=オカンが十日ほどで身につけようという挑戦だったのです。その姿を記録したVTRの表題が今日の当日記の表題です。
やったことがないけど取り敢えず試しにやってみよう、というときには床の上で一回転することすらできなかったオカンは、ブレイクダンス世界大会優勝者の指導の許、身体中に青痣をつくりながら毎日毎日秘密の練習をします。そして、何と十日で回転できるようになるのです。
オカンの「意地」が、加齢による運動能力の低下や筋力の衰えをものともせず難易度の高い技術を身につけさせたのです。
結果として次男との対決はオカンの負けに終わってしまいましたが、オカンは尊い努力をしたとわしは思います。「負け」という結果以上のものをオカンは得たはずですし、オカンの努力はオカン以外の者に確実に影響を及ぼしています。
ウインドミルを指導したブレイクダンスの偉い人はこのオカンよりもむしろ対決相手の次男に近い年令の人で、オカンはこの人の母親に近い年令の人。だから指導に当たって「もしも自分の母親がやりたいと言っても絶対にやらせない。それくらいウインドミルはとても危険な技。それでもできるようになりたいという熱意に負けました」とコメントしていました。
何かというと脊髄反射のように「無理」とか「あり得ない」とか否定を伴った意味合いの言葉を口にする若者にも、このオカンくらいの意地を持って頂きたいですね。おじさんももっとがんばるからきみ等もがんばれよ若者たち。先ずは「無理」や「あり得ない」を封印するところからがんばってくれ。
【今日のときどき血迷う】
ときどき(季節に一回くらい)「自分には絵が描けるのではないか」と見当違いなことを考えて練習しようとしたり画材を揃えようとしたりする。