::KEiMOの世界::



鍵  2004年02月27日(金)
事件は現場でも会議室でもない、あたしの事務机で起こった。


めずらしく今日は朝から人がいない。
9:00の始業チャイムが鳴り終わり、
2〜3本立て続けにかかってきた電話を終えてコーヒーを入れに席を立つ。
まだ3歩目の右足が床に着地していないその時、



   チャリーン  ポスッ  カツッ



あたしには見なくても何が起きたかわかる音がした。

あたしの机には重大書類がごっそり入っているので(嘘)、
掃除婦の振りして潜入している企業スパイなどからそれを守るため(嘘)、
毎日鍵をかけて帰ることが義務づけられている。
ずぼらなあたしはしょっちゅうそれを忘れて帰るので、
上司に、中の物をこっそり隠されたりしたこともあった。(本当)

で、忘れないように朝鍵を開けたらそのまま差しっぱなしにし、
帰りに施錠する方法を覚えた。
鍵を持ってくるのを忘れ、丸一日仕事にならなかったことが1度あったが、
おかげで機密書類は守られている(嘘)。
とにかく、あたしはうまくやっていた。
そう、あの席替えまでは...


我が部署は、入口面に対して垂直に机が配置されている。
あたしは一番入口に近い席に座っていた。
ドアは左斜め後ろに位置していた。
つまりドアが開く気配は感じるが振り返らないと
入ってくる人を確認できない場所に座っていたわけだ。
1つのフロアを2つの部署で共有しているため、
それ以上後ろにさがることは出来ない。
で、部長の考えにより新しく雇った中途採用君があたしのとこに、
あたしは対面側へと席移動したのが1ヶ月ほど前のこと。
これにより、当然ドアは右前方に。



  レイアウトをイメージしてください。
  ここで頭の良い人は気づくはずです。


  事務机の引出しってのはどっち側に付いていますか?


  そう、そうです。右側ですね?


  鍵穴は?


  そ〜ぅ、そうです。右側上段に付いています。
  そこに鍵が差しっぱなし。
  ドアは右前方。
  あなたは、席を立ちあがりドアの方へとむかいます。
  あなたの体は日々の暮らしの中で自然と染みついた、
  最短距離を選んでしまう。
  机のコーナーすれすれに回り込むと...


  そう
  

  あたるんです、鍵が。左モモに。



そんなわけで、席替えしてからしょっちゅうあたしは、
鍵に引っ掛かる女になってしまった。
おかげで、鍵はまるで超能力者のスプーンのよう。


今朝はそれが勢いづいて鍵がはずれ、
隣に置いてある紙くずだらけのゴミ箱へ落ちたってわけだ。


  
  上手く入ったもんだ。



感心しながら緑色のキーホルダーを広い上げ、事の重大さに気づいた。



  け、ケイモの鍵が首ちょんぱ  



鍵穴には残りの部分がささったままになっていた。
幸い、穴から5mmほど出ていたので引き抜き、FIX開始。

アロンアルファのCMはやらせだということがわかっただけだった。

瞬間接着ジェリータイプをもってしても、
瞬間じゃなく数分間待ってみても一向にくっつかない。

仕方ない。メーカーに頼んで合い鍵をつくろう。
ネット検索でPLUSの合い鍵問い合わせシートをGET。
明日には発送してくれるらしい。

さて、でも今日はどうしよう?


  5mm出てたし、折れた部分だけで施錠できるかな??


思い立ったら則実行。



入れてみた。



回らない。



  もうちょっと入れて...



  あっ!!



しっかり奥まで入ってしまった。
1mmたりとも顔を出さない折れた鍵。う〜む。
確かに鍵穴を指の腹で押さえながら回せば、施錠・解錠は思いのまま。



  ん、でも待てよ。


鍵抜かなきゃ、施錠しても意味ないじゃん。



  はぁ〜



なんとかつかめないもんかと隙間に爪を入れる。
せっかくのフレンチネイルが台無しになっただけだった。


隣の部署からピンセットを借りてくる。
「ピンセットって意外と太いのね」と気づいただけだった。


もう一度アロンアルファの力を信じてみることにした。
もうちょっとで鍵穴事固定してしまうとこだった。


引出しを開け、使えそうな物を物色。
クリップを伸ばして小さな隙間に入れ、てこの原理でほじくってみた。
ほんのちょっぴり前にでてきた。
もう一度...
うぅ、また押し込んでしまった。
慎重に...さっきの位置まででてきた。
なんてことを繰り返し、クリップを2本に増やしてはさみ打ち。
アロンアルファがくずとなってポロポロ落ちてきた。
本当に使えないやつだ。

何度も繰り返す打ちにコツがつかめてきた。
力を入れすぎず抜きすぎず...ゆっくり、ゆっくり...

摘出成功。
小さな幸せを感じた、金曜の朝。

そして今、再び鍵を入れてみたい衝動と戦っている。








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