| 2007年04月26日(木) |
はじめてのにゅうこう |
新丸子の駅についたのは午後6時15分ぐらいだと思う。ねこのしっぽは8時までOKなので、まあ、余裕だろう。薄暗くなった新丸子駅の前の商店街は、わるくない雰囲気だった。こじんまりとしているが、活気がある。夕飯のための総菜のにおいと熱が駅の周りを包みこんでいる。そういう活気をもっている街なんだと思う。ふと、学生時代に住んでいた中井を思い出す。そんな気分になったのも、まがりなりにも初めてオフセをだせそうなめどがついたからかもしれない。睡眠は全然たりていないもの眠くはならない。緊張がたまったのかそれとも疲労がたまりすぎていたのか、頭のどこかが抜けたような気分でねこのしっぽにむかう。
今回はなんとかオフセにこぎつけることができた。ページ数は30ページ。正直きつかった。やはり無理なくやろうとすれば16ページぐらいにしとくのが妥当だ。なにせページ数がふえれば増えるほど、必要な手間とエネルギーと時間は乗算で増えていく。とはいえ、オリジナルで読ませようとすればどうしても25ページ程度のボリュームは必要になってくると思う。
正直にいえば、今回も完成させることはできなかった。完成度でいえば60パーセントいかないだろう。書き込めなかったところも多いし。写植を張る作業が予想以上にてまどってそこら辺のケアはまるでできなかった。普通にコピーにすることも考えたが、それはやめた。ひとつは、ページ数がおおいんでコピーにするのも面倒くさいのが一つ。もう一つの理由としては自分の場合だと、コピーをつくると本当に紙屑を増産している気分で鬱になるからだ。
そんなことをぐずぐず考えながらうろうろしていたら、いつの間にかねこのしっぽの正面についていた。一瞬躊躇しつつも入る。
いま思い返すと、正直恥ずかしい。客観的にみると不審者が入ってきたぐらいにおもわれたのかもしれない。 「印刷のごいらいですか?」 つったってる自分に店員のおねえさんが声をかけてくれる。 「そ、そうです。コミティアなんですが、大丈夫ですよね?」 「はい、大丈夫です。」 ストレ―トの黒髪をひっつめにメガネというナチュラル系のおねえさんだった。
そんなわけで原稿をチェックしてもらう。 「あ、あの、ちょっとどうしても仕上げが雑になって、それで、下らないっすよね、こんな。」 情けない卑下が口をつく。 「そんな、とんでもないです。・・・」 おねえさんがそのどうしようもない私の発言に対して手慣れた、しかし心底安心させるようなフォローをしてくれる。にたような精神状態の輩がたくさんいるんだろう。そつのなく、手慣れた私の肥大した自意識への対応に自分のくだらなさを再認識させられつつ、それでもなおありがたいおねえさんの誠実な態度に救われる。初めて風俗へいったときの感覚を思い出したりした。
「・・・それで、けっきょくこのページは。」 「あ、そうですね。ぬいちゃってください。」 想定していたページでなくなったページがある。本来、ねこねこぱっくの36ページは表紙をいれての36ページであり、本文のみでは32ページになるのだが、私はそれを本文のみで36ページと勘違いしていたのだ。そこで、本来必要のないページを4ページつくらなければいけなくなったと勘違いして、それのためにあほなことを考えていたのだ。
普通ならば、あとがきをかいたり、適当なイラストを描いたりするところだろうが、そこで私は原稿用紙の左上にアルファベットを4つ描いた。MEMОである。前々から同人誌の最後に作者が出しゃばって、読者とコミュニケーションしたがるのをみっともないと思っていた。あとがきなんぞはおまけなんだから、あっさりしてればまだいいものを、しばしばやたらこってりとしたあとがきをかくひとも見かけていささか食傷気味に感じていた。
そこでメモである。本来はやたらこってりとしたあとがきが載せられる部分にただ白紙があり、左上にMEMОと書かれている。明らかな確信犯であり半分嫌がらせである。にしむーあたりが完成品をみたら吹き出しながら、 「なんですかこれは。なにやってんですかみるくさん!なにやってんですか。なにやってんですか。」 と半分あきれながら突っ込んでくれそうだ。
そんな幸せな未来を夢見ていたが、無駄になった。今回どうしても必要だったまえがきと奥付のみがついた本来予定していた形になりそうである。
表紙の色は黄色にした。白にするとまたまたコピー誌チックで鬱になるからだ。部数は百。締切ぎりぎりだったから最低でそれだけとのことだった。まあ、安くばらまけるオフセが手に入ったと思えば良い。ジムでもそれなりの運用はできるだろう。
入稿が終わって、ねこのしっぽをでる。近くに多摩川があるというので、足を運ぶことにする。道をまっすぐにすすんでいくと、神社があった。多摩川にいくつもりだったが、周囲には見当たらず、また時間も時間で迷ったら面倒なんで今回はあきらめることにする。偶然みつけた神社にはいる。本堂にはいって賽銭でも入れていこうとおもい、向ってみたら、どうやら工事中だったみたいでさい銭箱の向こうの仕切られてる部分に角材が横たわっている始末だった。これはまずいとおもい、入口までもどるが、急に酔狂をおこし引き返す。工事中の神社のさい銭箱に小銭をいれて祈願する。お稲荷さんだったから、仏教系だ、ならばあんまりしゃちほこばったことをすることもないなと考える。
新丸子の駅にもどり駅前のドトールでブレンドをテイクアウトしてすする。疲労しきっていて眠くもならない状態だった。コーヒーの味は良かったような気もするがよく覚えていない。
|