Yが寝しなに読んでくれと持ってきた、「世界の昔話」。
では今宵は、イギリスの昔話といきましょうか、とページを繰る。
おばあさんが豚を一匹、市場で買いました。 おばあさんは豚を家に連れて帰りますが、家の門をくぐろうとしません。
そこでおばあさんは、犬に頼みました。 豚をかんでおくれ、と。 しかし犬は知らん顔。
そこでおばあさんは、棒に頼みました。 犬をぶっておくれ、と。 しかし棒は知らん顔。
そこでおばあさんは、火に頼みました。 棒を燃してくれ、と。 しかし棒は知らん顔。
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以下同文で、昔話特有の繰り返しが続く。 話のターニングポイントは、おばあさんの態度豹変にある。
おばあさんは牛に干草をやりました。 すると牛は乳を出しました。
おばあさんは乳をねずみにやりました。 するとねずみは、−おばあさんの頼みどおり−縄を食いちぎりました。
すると縄は、男をしばりつけようとしました。
以下同文で続き、おばあさんに頼まれた者たちは次々に行動を起こし、 かくしておばあさんの豚は、家の門をくぐるのである。
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おばあさんは自分で手を下さない。 ただ交渉をするだけである。
縄を食いちぎるねずみは、門をくぐらない豚のことなど知っちゃいない。 それは、自分の働きの意味の、理解を超えている。
おばあさんは粘り強い交渉の果てに、 ー時にはインセンティブを与えー 思ったとおりの結果を手に入れている。
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英国おそろしや。 支配することの何たるやについて、 これほど分かりやすい話があるだろうか。
私のあてずっぽうで言うと、英国は「世界のおばあさん」である。 過去も現在も、おそらく未来も、
表向きはビロードみたいな古臭い伝統にまみれているが、 その実態は、最先端どころか、100年先に向けて、犬や棒に交渉をはじめている。 アメリカもイスラエルも、中国も、ロシアも、それに追いつけない。
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英国の昔話にからめて、今の国際情勢を思う。
マスコミは「縄」かもしれず、オリンピックは「犬」かもしれない。 シリア情勢も、豚に近いが、結局のところ豚ではないのだと思う。
世界の本当の目的と方向は、 ーおばあさんが門をくぐらせたい豚はー、 一体何なのだろうか。
2005年09月07日(水) 残念 2004年09月07日(火) 待ったなしの経営判断
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