甲府にて、昼前に仕事が完了し、解放される。
近くに住んでいるというGさんが、爽やかな笑顔で待ち構えていた。 ひと仕事終え、泥のように着かれきった我々二人を車に積み込み、さっそうとランチへ。
長年憧れていた、素晴らしい伝統的なワイン醸造場の見学をし、 美術館へ絵画鑑賞へ。
山梨県立美術館は、ミレーとその一派の作品群の収集で知られている。 静かな館内に、足をはこぶ。
*
名画であるとかそうでないという以前に、 300年も前の西洋の油絵が目の前にある不思議。
誰かが、筆を持ってここに確かに色を置いた。 その行為の質量はいささかも減じていない。
近代化以前の人間がする魂の込め方や生命力は、 現代人のそれとは相当にレベルが違うものだと思う。
だから、私は、そのレベルの違いに圧倒される。 若くして世を去る前妻の肖像画には、 描いたミレーと描かれた妻の双方の魂がいまだ宿っている。
* 「種を撒く人」では、ちょっとした推理。
この作品は、初版とでもいうべき作品と、 それをそっくり真似て本人が複製したものがあるのらしい。
一つはこの美術館に、もう一つはボストン美術館にある。 展示場所には、ボストンの一枚も、複製が展示されている。
どちらが最初の一枚であるかは解明されていないそうである。
まったく私の勘であるが、ボストン美術館の方ではないかと思う。
理由は、二つ。
一つは、ボストンの農民の方が、サロンで「反社会的である」と物議をかもしたという「新しい農民の姿」の勢いが感じられるから。 もう一つは、相当穿った見方だが、本物はアジアの美術館には置かせないだろうと思うから。
2008年02月23日(土) オリンピックか戦争か 2006年02月23日(木) 2004年02月23日(月) 死ねない犬
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