2011年01月05日(水) |
人はなぜ物語をつくるのか |
正月に古本屋で手に入れた、知里幸恵編訳「アイヌ神謡集」。 編訳者の巻頭言は大正十一年であるから、ずいぶんと古い本である。
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神謡というのは、神が主人公となって自分の体験を語る叙事詩である。 アイヌのユーカラと言えば、ご存知の方もあるかもしれない。
登場する神は、クマ、オオカミ、キツネ、エゾイタチ、エゾフクロウ、カエル、沼貝、トリカブトなど、実に様々な自然界の生き物である。
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物語というのは、心の地図なのである。 人間の果てしない内面に座標や標高を与え、道筋をつけ、 そこにあるものをマークする。
いにしえの物語というのは、古地図である。と同時に、 現代の物語ではもう書き出すことのできない、 パンゲア大陸のような精神領域が書いてある。
ウサギやキツネが語る叙事詩は、一見素朴でほほえましいが、 現代の物語にはない重量感がある。
物語をひとつ知る度に、アイヌの魂をひとつ飲み込んでいるような気がするのだ。
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