浅間日記

2010年02月12日(金) 孫返り

母とAを連れて、歌舞伎座へ芝居見物に。

分不相応に高額なチケットは、清水の舞台から飛び降りるつもりで購入した。

かつて月ごとに祖母とでかけた思い出の歌舞伎座は、今年4月には取り壊されてしまう。
最後にどうしてもここでの芝居を一目みておきたかった。



三代でおめかしをして、地下鉄に乗って、銀座四丁目の交差点に出る。
銀座の華やかな街並みを見上げて、Aはわあと声を上げる。



懐かしい歌舞伎座正面入り口には、カウントダウンのプレートがかけられている。人々は記念写真を撮っている。

何もかもが変わらないけれど、外壁の様子などをみるとやはり少しくたびれたのかなと思う。



満を持して開場し、賑やかしく客席につく。場内を改めてぐるっと見回す。
舞台も花道も、桟敷や一幕見席も、記憶に比べてずいぶんこじんまりと近い。

助六はあの辺り、忠臣蔵を通しで見たときはあの席、今は亡き歌右衛門を花道の横で見たことなど、つい先ほどのことのように蘇る。

本日お別れの演目が、好きな役者の一人である中村勘三郎の「高杯」「籠釣瓶花街酔醒」というのも、申し合わせのようである。

福助や三津五郎も、それぞれに年を重ねた。


遊び好きな祖母のお供とはいえ、ずいぶんな贅沢をさせてもらった十代の記憶は、今でも優しい。
何十年ぶりに、孫娘に戻って、歌舞伎座にありがとう、さようならを言う。



晴れ晴れした気持ちで、夜の銀座に出る。

Aはというと、そんなに母の思いがあるのならいいものなのだろう、という気持ち一筋で、難しい演目をけなげにそれなりに楽しんだようである。

2009年02月12日(木) 休日の後
2007年02月12日(月) リスクが顕在化するとき


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