強い日差しの中、所用で彼方此方奔走す。
川沿いにある、饂飩屋のような茶店のような、馴染みの店で一服。 おばさんに熱いコーヒーを淹れてもらって、一息つく。
川向こうの桐の木は、紫色の花が満開である。 放心して珈琲をすすりながら、窓枠ごしにそれを眺める。
この辺りは古い町だから、屋敷だった土地に残っているのだろう。 結構な桐の大木が、味気ない月極駐車場の隅っこなんかに生き延びている。
春と夏の間、藤みたいな豪奢な「絵札」にはなれないけれど、 かつて存在した、丁寧な暮らしぶりの記憶をとどめるように、 静かに優しく花を咲かせるこの淡い紫の桐花が、私は結構好きなんである。
2005年05月12日(木)
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