Aを連れて、図書館へ行く。 沢山の物語を聞かせる。 予定調和のディズニーではなく、無念な話や悲しい話、そして本当の希望の話を。 Aの、やりきれない現実世界に、物語の錘をつけることで、 ひょっとするとそれは、静かに心の底へ沈んでいくかもしれない。 そう思ったからだ。
Aを連れて、温水プールへ。 そこは市営の小さなプールで、子どもはほとんどいないし、 猛烈な勢いでバタフライをやったりする人もいない。
浮力に身体をあずけて、その感覚を楽しんでいる。 深く潜って、その遮断された世界の中にいる。 強張った身体と心がほどけてきたころに、 Aはやっといい顔で笑った。
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他には何もできなくてもいいから、あなたを苦しみから守りたい、 という歌のようにできればいいのだが、 何しろ食っていくためには、Aを苦しみから守る他に色々やらねばならない。 かくしてAとの1日が収まった深夜、この数日でできなかった仕事を片付ける。
こんな大変な時に、今週はまた彼方此方出かけなければならないし、 何本かの仕事で大切な約束をしている。
全てを捨てて一緒に逃げようか、という、場違いな科白がうかぶ。
2004年12月04日(土) 売った覚えのないものを買い取られている話
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