忙中閑有で、「ハウルの動く城」を鑑賞。 先に見ていたHはあまりよくないと評していた。
木村拓哉が主人公の声を演じているとかラブストーリーとかいう 前評判がされていたけれど、これは、私に言わせると 引きこもりの男が兵役拒否をしている話なんである。 そして、反戦の強いメッセージ。 この作品は、宮崎監督にとっての「ゲルニカ」あるいは「独裁者」なのだ。
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軍服を着た兵士達が、家庭や生活を奪い取りにやってくる恐ろしさ。 戦争で住んでいる街を追われるみじめさ。 爆撃で破壊される建物の無残さ。 そして、国家権力にからめとられざるを得ない、人々の自由な生き方。 親子の縁まで利用して懐柔しようとする策略。 こういう場面の人間や風景に、背筋が寒くなる程のリアリティを込めることで、 この監督は、戦争という人殺し行為に対する怒りをぶつけている。 「こういうことなんだぞ、戦争というのは!」と。
多分この人は、気が狂うほど、今の世界に怒っているのだと思う。 作品はストーリーはつながりにくいわ、登場人物の奥行きに欠けるわと、 普通には全く楽しませてくれないから、 もしかすると本当に心身に変調を来たしてしまったのかもしれない。 そんな狂気の中でよくもこの映画を完成できたものだと、作品を見て思う。
一流の表現者が時代に感じ取る臭いを、馬鹿にしてはいけない。 それは一つの能力であり、彼らはいわば炭鉱のカナリヤなのである。
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