浅間日記

2004年04月27日(火) よい子馬鹿

所用で川向こうの地方事務所まででかける。
庁舎の広いロビーの壁に、虐待防止のポスターを見つける。
泉谷しげるというタレントの、凄みを利かせた写真と
「許せねえ、児童虐待」というキャッチフレーズ。

厚生労働省の担当課は、「怒り」をテーマとしてデザインしたとのこと。
虐待に対する国民の通告の義務に関する啓発も
その目的に含まれているようだ。

0.1秒の速さで違和感の反応。
こんなネガティブなキャンペーンを打って、
虐待は本当になくなるのだろうか。
それとも、そのように思う私は、どこか認識が甘いのだろうか。

「ゴミを捨てるのはやめましょう」「海や山をきれいにしよう」
このような、まったく人の心に届かない偽善的な
公共用語が今までどれだけあふれてきたことか。

子どもに虐待をしてしまう大人は様々であるが、
事後にひどく後悔するというのも、一つのパターンだ。
そんな、自分でさえ自分を嫌悪している大人に対して、
こんな暴力的な言葉で追い詰めて、何が楽しいのだ。

罰することばかり上手くなって、救済の知恵がない。
悲劇であり社会全体で止めなければいけないことは、
こんなポスターなんかなくったって誰もが承知なのだ。

親子であることは素晴らしいこと、
親子の愛情は何ものにも代えがたいもの、
それを損なわれている、子どもに手を上げてしまうあなた達は
自分達が不幸なのですよ、でも幸せになる方法はありますよ、と
どうして言えないのだ。

件のポスターは学校に張り出されているようだが、子ども達に
親というのは悪いもの、自分に危害を加えるもの、
一緒にいないほうがよいもの、と思わせたいのだろうか。

自分の子どもが「親による虐待」という概念を知る日、
それもこんなポスターによって知ってしまう日、
私はどういう説明の言葉を用意すればよいのだろう。


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