■ 某突起名の人生つぶやき日記 ■

某突起名の独り言。
あくまで独り言ですので・・・まぁ、お気になさらず。

2002年07月27日(土) 残骸・��











私はいつも髪をほどいて出勤する。










職場では(長い髪をそのままに仕事が出来るほど動きの無い仕事ではないので)

私は常に髪を後ろ側で一つにまとめてひっ詰めている。





最初のうちは自宅できちんと髪を纏めてその髪型のまま車に乗って、

一時間半の道のりを運転していたのだが、運転している間に肩や頭の地が凝って

頭痛がしだし、それがこのひっ詰め髪の所為だと判明してからは

職場までは髪を下ろして来て、何故か出勤距離が一番遠くの私が

(遅刻する日を除いて)いつも皆より30分近くも早く職場に着くので、

まだ仕事仲間が来ないうちにその辺でひっ詰めてしまう

・・・というのがこの職場に来てからの毎日の習慣になっていた。





だから私のひっ詰める前の髪を下ろしている状態を見るのはせいぜい、

チラホラと早朝出勤してひと作業終え、コーヒーを飲む正社員のおじさん達や、

日の昇らないうちから起床して田んぼの世話を一通りしてから出勤して、

朝のつかの間の休憩をしている早起きのパートのおばさん達くらいのモノ。





それも最初のうちは、「わ、誰かと思った!」と驚かれ、笑われたが、

勤め出して一週間もしないうちに皆慣れっこになってしまって、

ざんばら髪で出勤してきて、櫛で髪の毛を梳ってゴムでピチ、と纏める

私の姿はすっかり始業30分前のコーヒータイムに馴染んでしまっていた。




















その日も私はいつものように始業30分前に出勤して、

いつものように髪を纏めるべくして、

自分の目の前に鏡を据えて髪を丁寧に梳っていた。





向こうのテーブルには、朝の番組を楽しみながらコーヒーを飲むおじさんや

他愛無いおしゃべりをしながら始業前のおやつを食べるおばさん達。

何も変わりは無いいつもの朝の休憩室の一風景。










そこへドアをバタリと開けて休憩室に入ってきた人物が。


「早いな。」

「あ?ええ、まあたまには(笑」


私達派遣社員が休憩所として割り振られている場所は

給湯室が邪魔をしていて、休憩室に入ってきた人物がすぐには見えない。

しかし、早番のおじさんに声をかけられて愛想笑いをするその声を聞いて

すぐに誰かは判断できた。










・・・Zだな。










私は内心、Zとふたりきりで会話しなければいけないコトへ舌打ちしたが、

そんなコトは気にも留めてない風に、不動の表情で髪を梳かしていた。





給湯室の角を曲がって来たZは私の姿を認めると一瞬小さい目を見開いて

肩を揺るがせたが、すぐに平静の表情に戻って言った。





「・・・早いね。」



「・・・そぉ?」





内心いつもなら私が職場に着いてから3番目くらいに来るZが

何故今日に限ってこんなに早いのか疑問に思いながら髪を梳かしていたが、

それよりも今までほとんど一対一で会話するコトが無かったZと、

他の派遣仲間が来るまでふたりきりにならなければいけないコトへの

不安が先立っていた。

しかも次の人が来るであろう時間帯まで悠に15分はある。





Zが気まずさを感じて、時間一杯まで何処かに行っていてくれればいいのだが、

何故かこの日のZは私に執拗に質問を浴びせかけ、何処かに行ってはくれない。





「いつもこんな早いの?」



「・・・ん?う〜ん・・・まあ、始業30分前にはほとんど。」



「何でそんなに早く来るんだ?」



「う〜ん・・・家が遠いから、渋滞とかを予想して出るとこんな時間に。」



「でも早く着いてるんだから、あと20分くらい遅くてもいいんじゃないか?」



「いや、混んでる日は同じ時間に出てもギリギリになっちゃうから。」



「ふ〜ん・・・てコトは今日は混んでなかったんだ。」



「そゆコト。」





他愛の無い会話だが、Zはいつも以上に無遠慮に私を観察している。

その視線に気付いて顔を上げ、まじまじと見たZの顔は赤く浮腫んでいて

あれ、この人ってこんな顔してたかなと思いながらも、私は自分の髪を梳く方に

神経を集中していた。





鏡をのぞきこんで櫛で徐々に髪を纏めていく作業をしていると、唐突に私の隣の

椅子がカタン、と音を立てる。





驚いてそちらの方向を見ると、至近距離にZが居る。





「いや、驚くこと無いよ。続けて。」




執拗な視線はそのままで隣に座るZは、浮腫んで赤い顔と目もあって

やや不気味に見えた。

何?と、顔だけで問うと、Zはニヤリと口元を歪めて言った。





「綺麗な顔してたんだな。」



「・・・。」



「いや、ホントさ。」



「・・・。」



「いや、綺麗な顔をしてるのは分かってたが、いつも地味な服装して

 髪の毛ひっ詰めてるだろ?気がつく隙が無かったよ。」



「・・・・。」



「おっと、髪、結ばなくてもいいじゃないか。」



「なんで。」



「髪下ろしてる君を見たいからさ。しばらくそのままで居てくれ。」



「はぁ?」



「俺の恋人になってくれないか。」



「悪いけど、彼氏居るんで。」



「別れればいい。それがイヤなら二股だっていいさ。」



「私はイヤ。」





私の呆れた顔を見ながらも、熱っぽい目で次から次へと口説き文句とも取れる

軽薄な言葉を紡ぐZが私にはいつも以上に間抜けな人物に思えたが、

私の意識はそれ以上に私の背中を這い登る嫌悪感へと集中していた。



























今までアンタが私に対して隠そうと思いながら

そこかしこからにじみ出てたそっけない態度は何だったの?

相手がたかが髪を下ろしたくらいでそんなにガラリと態度を変えて、

相手が何も思わないと思ってるのかしら。

バカみたい。





ああ、アンタもか。

自分が恋愛対象として意識できる女には態度を変えるのね。

性的に欲情させられるかどうかがすべてなんでしょ?

それで態度をコロコロ変えて、

それでも女は気が付かないと思いこんでるバカな男のひとりなんでしょ?





それでどうせ私の普段が地味だから

ベタベタに甘い態度すればモノになると思ってるんでしょ?





自分が「やりたい」って願望持って口説いたら

願望どおりになると思ってる種類の男なんでしょ?

自分がその女の穴に突っ込む目的さえ達成できれば

彼氏の居る女に手を出しても、罪悪感の欠片も疼かない人種なんでしょ?

自分の判断が欲情で狂っちゃってるコトに気が付かないのかしら。





おあいにく様。

「見た目に反して」私はそんな甘ったるい言葉聞き飽きちゃってるわよ。

ろくすっぽ知りもしない女にそんな言葉垂れ流す男が

カスばっかだっていうのも良く知ってる。

アンタが今まで口説いてきた女がどうだったか知らないけど、

私はアンタの判断が間違いだってコト教えてあげる。





股間のモノに振り回されてる男。

なんてノーテンキ。

なんて滑稽。





















「いやぁ・・・なんて言うのか・・・ホント綺麗だ。」



「・・・。」



「今日一日、いや、これからずっと髪を下ろしててくれ。」



「・・・・。」



「・・・惚れそうだよ。」









髪を梳いている私の傍らで、うっとりとそんな言葉を垂れ流すZは、

ニコニコといつもの笑顔を崩さない私の心の奥底では、

今日付けで「絶対抱かれたくない男」へとカテゴライズされていた。























アンタに、アタシを惹く何があるって言うの?

口説けると確信するその根拠を教えてよ。

アタシが納得できるように。















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