主人が入院した時、4人部屋には先客として、じいさま2人がいた。 話好きで競馬好きのじいさまと、おっとりした感じのじいさま。 最初は3人で過ごしていたが、暫くすると4人目がやって来た。 この4人目のジジイが曲者で、重症のようで横になったままなのだが、ずーっと「イテテテテテテ」「ウーンウーン」「アイタタタタタ」「チクショー」と言っているのだ。ずーっと! 壊れた蓄音機かよ!と滞在時間の短い私ですら喉まで出掛かったのに、これを延々と訊かされる同室者は堪ったものではないと思うのだが、誰一人として文句を言わないって凄いと思った。 それだけならまだしも、ある時、競馬好きじいさまがテレビを付けたまま用足しに行ったら、ジジイが 「ったくテレビ付けっ放しでうるせえんだよ! ここはお前んちじゃねえっての!」 とブツクサ言っていたらしい。 えっアンタのエンドレス「イテテテテテ」の方がよっぽど煩いよ……と主人は吃驚したが、口には出さなかったという。私ならきっと考える間も無く口から飛び出てしまうだろう。 このジジイの件もあって私は個室移動を提案し続けたのだが、主人は最後まで首を縦に振らなかった。堪え性の無い私には理解出来ない。
年末年始は職員の人手が少なくなる事もあり、よっぽど重症でなければ「お家でお正月を」という建前のもと、入院患者達は家に帰される。 主人の病室では、ジジイを残して3人が退院となった訳だが、ジジイ1人で4人部屋を個室のように使う訳ではない。職員の手間を省くために、どこかの4人部屋に移動させられる事になる。 退院間際の競馬好きじいさまは、ジジイに 「こうやって誰かの話し声がする部屋ならまだいいけれど、残った患者達だけ集められるから、話しかけても誰も返事してくれないような人工呼吸器に繋がれた患者ばっかりの部屋に移されるよ、きっと」 と、じわじわと自分で敵を取っていたそうである。 じいさま、やるなあ!
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