昨年末に、youtubeでラフマニノフの前奏曲を聴き比べていたら、主人が、 「キーシンもアシュケナージも、ピアノの音しかしないけれど、プロコフィエフのピアノには、色彩感がある。」 と評していた。 一方私は、テンポや強弱のつけ方の違いぐらいしか判らず、どれもピアノの演奏なのだから、ピアノの音しかしないのは当たり前なのでは?と不思議に思った。 しかしその後、アニメ版のだめカンタービレを見ていたら、 「なんて色彩感豊かなピアノ!」 という台詞があり、そうそうそれなんだよねー弾く人によって違うんだよ、と得心する主人に対し、やはりわからない私なのであった。 そんな私の弾くピアノは、やはり白黒なんだろうな。
今日は偶々予告で、「スーパーピアノレッスン」で展覧会の絵をやると知ったので、録画して主人と一緒に見た。 先生は、フセイン・セルメットというピアニスト。ど素人の私は、初めて聞いた名前だ。 生徒は金髪で顎の無い若者。名前は忘れた。 なんかのコンクールで優勝したほどの腕前だそうだが、ミスタッチが多くてとても雑に聞こえる。 えっ何故そこでテンポを崩す?と思ったら、やはり先生にも指摘されているし。 それなりに上手いんだろうけれど、先生のピアノを聴いてしまうと、まだまだ若造である。 そして主人が言うには、 「この先生、凄い。これだよ、色彩感のあるピアノ!」 との事。彼にしては珍しく絶賛だ。 番組の中で、先生が、 「この音はこう。猫のように」 と言って、猫が引っかくように素早いタッチで弾いていた。 若造の音と、全然違う。 「打楽器と同じで、マレットを打つ強さだけじゃなくて、速さで音が変わるんだよ」 と主人が解説を入れてくれた。 あ そういう事か! 記憶が甦った。 部活で先輩が叩いていたティンパニ、何であんなにぼよ〜んとした音しか出せないんだろう、そこはもっと硬くて鋭い音が欲しいのに。 猫。 猫のように。 昔ピアノを習っていた時に、言葉は違うが同じ弾き方で見本を見せられた。 そういう事だったのか、と今やっと理解出来た。 先生はそういう事を私に教えたかったのねー! 気付くの遅いよ私。 ヘレン・ケラーが「ウォーター!」と叫んだ時の気持ちって、こんなだったのだろうなと思った。
番組終わりのセルメット先生の演奏は、圧巻だった。 ただ、室内が熱過ぎたようで、先生汗だく。トルコには冷房も無いのか! 汗を吸った先生のシャツの色が、完全に変わってしまっていた。 おまけに汗で眼鏡がずり落ちるので、先生しょっちゅう眼鏡の位置を直しながら弾いている。 もっと集中出来る環境で弾いて欲しかったと、それだけが残念で、先生が気の毒であった。 だって、30分もかかるんだよ、全曲演奏……。
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