着物を着て出かけた帰り、スーパーに寄った時の出来事。
買い物を済ませて駐車場に戻ると、 「すみませーん」 と、声をかけられた。 振り向くと、見知らぬ男性が車の助手席の窓から顔を出していた。 ワゴンタイプというのだろうか、箱型の大きな車の中には、背広姿のおじさん達が数人乗っている。 「この近くに、料亭はありますか?」 と訊かれた。 料亭……行った事無いから知らないんだけれど(汗)。 大きい車に大勢で乗っているって言う事は、お仕事なのかしら。 この土地の人じゃないのかも知れない。 そうすると、一応ここの住民として、知っている情報は与えないといけないと言う気持ちになった。 「ええと、この辺じゃなくて、駅の辺りか、橋を渡った街中にならあると思いますが」 知らないので、どんなに頑張ってもこれ以上の事は言えなかった。 主人なら職場で行くから知っていそうだけれど、私は料亭なんて縁が無いんだもん。 相手は一寸がっかりしたようだったが、 「じゃあ、そっちの方に行ってみます。有難うございました」 と走り去った。
何で私に訊いて来たんだろうと不思議だったが、主人にその話をすると、彼はこう断言した。 「あははは、それは料亭の人と間違われたんだよ。だってシオン、着物着てたんでしょ」 そ、そうだったのか! 確かに私が着ていたのは、料亭勤務と思われかねないような、地味な色合いの紬だった。 しかも殆ど無地。 習い事の先生(推定70歳前後)をして、 「随分地味な着物ねえ。そんなの私だって着ないわよ〜」 と言わしめたほどである。 好きなんだけどなあ、この紬の着物。汚しても目立たなさそうな色だし(オイ)。 着る時は、帯を選ぼうと思った出来事であった。
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