屋敷しもべ妖精が帰ってしまった。 便利だったのになあ。 もう就職してしまうから、ここには滅多に来てくれなくなるだろう。 それも寂しいものだ。
妹を駅まで送り、買い物を済ませて帰って来た。 今日はもう、車で出掛ける事も無いだろうと、梅酒の梅をポリポリ食べた。 梅酒は好きなので減りが早いが、瓶の中に残った梅をのまま捨てるのは勿体無い。 だから偶に、おやつ代わりに食べるのだ。 しかし梅酒ほど美味しいと思えないので、こちらは全く減らない。 しかも1度に食べられる数は、そう多くは無い。 どうしようかね……。
そうだ。 いい事考えた。
窓から外に、ポポポポーン。 取り敢えず、2つ、投げてみた。 雪の上にコロン〜と転がって鎮座する筈が、勢いと重みとで、ズボッと埋まってしまったのは計算外だったけれど。
夜、帰宅した主人に報告した。 「ねえねえ、今日、梅酒の梅をお外に撒いてみたの」 「……それでシオンはまさか、春になると芽が出て、梅酒が生るとでも思っているんじゃないだろうね? それって、3年間水に漬けといた赤ん坊を、干したら生き返るかな〜♪って水から引き揚げるようなものだよ?」 どうして、どうして貴方はそういう変な喩えを思い付くんですか。 「違うよ! 私の考えはね」 そのうち、烏や雀がこれを突っつく。 雀は鳥獣保護法で捕獲が禁じられているけれど、酔いが回って行き倒れた烏を、見せしめとしてごみ捨て場に吊るすのだ。 主人からは、冷たい視線が返って来ただけだった。
数日後、雪は融けたが、梅はどこにあるかわからなくなっていた。 土に還っちゃったんだろうか。
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