私と妹ドビーは、歳が離れている。 なので、私にとってドビーは、妹というよりも玩具であった。 一方、妹にとっての私は、何でも知っていて勉強も教えてくれる、自慢の姉だったらしい……歳が離れていればそれだけ長生きしているという事で、妹が知らない事を知っていて当たり前なのだが。 だから、うちのお姉ちゃんは学校の成績も優秀!と信じ込んでいたのだな。恐るべき誤解。
そんな、お姉ちゃん大好きの屋敷しもべ妖精だが、こいつはいつも、寒そうな格好でやって来る。 ここはお前の住んでいる所よりも寒いんだから、もっと暖かい服を着て来なさいと言っているのだが、お洒落優先な年頃なのか。 今回も例に漏れず、上はババシャツに薄手のセーターだけという服装だったので、ババシャツの上にこれを着ておきなさいと言って、タートルネックのカットソーを渡してやった。 これは私が縫った物で、一寸首周りが狭い。 もっと伸ばしながら縫うべきだったなあと、作り終わってから思ったのだが、首がぎりぎり入る程度である。 ところが。 「お姉ちゃん、頭が通らない〜」 「先にこれを被りな。摩擦が少なくなって、着易くなるから」 とスカーフを渡したが、それでも頭がなかなか出て来ない。 「うわーん」 「頑張れ、もう一寸だ!」 と応援したが、私は気付いてしまった。 黒いスカーフを被った丸い頭が、タートルネックの丸い穴から覗いている。 こ、これは……。 「わははは! お前のその格好、今まさに肛門から出ようと頑張っているウンコみたいだ! 写真に撮ってもいいよね? 一寸待ってて、今デジカメ持って来るわ」 と私が鞄を取りに行こうとしたところ、妹は激しく抵抗。 「駄目! 絶対駄目!! それより何とかしてよう〜」 格闘の末、妹の頭は何とかタートルネックから生まれて来たのだった。 「おめでとう。大変な難産だったね」 と私が言うと、妹は真っ赤な顔して憤慨していた。 「酷いよお姉ちゃん、人をウンコ扱いして! 大体何でこんなに首周りの狭いの作ったのさ!」 「確かに狭いけれど、私はそんなに苦しむほど……あ、そうか。背格好は同じぐらいだと思っていたけれど、ドビーの方が私よりも頭が大きいんだ」 うんこ扱いされた上に顔がでかいと言われ、益々顔を赤くしてキィ〜となる妹であった。
こんなに酷い扱いを受けても、私は妹のヒーローらしい。 小さい頃に可愛がっておくと、屋敷しもべ妖精はよく懐く。
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