「氷点」を録画予約して、温泉にやって来た。 ここのお宿に泊まるのは3度目である。 食事は山の物が美味しいが、全体的には大した事無いし、お部屋も綺麗な旅館ではない。 それでも来るのは、やはりお湯がいいからなのだ。 お宿の中に何種類かの温泉があり、宿泊せずに外からお湯に浸かる為だけにやって来る温泉客も多い。 何せ朝から老人が、団体でバスに乗ってやって来るのだ。 混んでいたのでささっと入って、夕食後暫くして、そういう客がいなくなった頃を見計らって、ゆっくり入り直した。 長い廊下を通って温泉に行くまでは寒くて足早になるが、湯上がりに部屋に戻る時にはすっかりぽかぽかである。 「やっぱりここはいいわねえ。特に○○の湯がとろとろしてて大好き♪」 部屋に戻ってから主人にそう言うと、 「でも××の湯の方がもっととろとろだよ」 と言われたので、私は驚いた。 「えっ、○○が1番とろとろじゃない?」 「ううん、××だってば。もしかして、シオンは○○にしか入っていないのか」 「うん……だって、前に来た時に、○○が1番だったと記憶していたから」 と私が言うと、主人は大笑いした。 「シオンの記憶は全く、当てにならないなあ!」 ……失礼な。
××の湯に行ってみると、○○よりも遥かにとろとろだった。 おかしいなあ、確かに○○だと思っていたのに。 しかもこれだ!と思うと、そればっかりの一丁食いになってしまうから、間違いに気付きにくいと来たもんだ。 よし、今度は間違わないぞ。
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