ダーリンは辛い物が大好きだ。 しかし私は味覚がお子ちゃまで、辛い物も苦い物もまるで駄目。 彼が食卓で朝鮮漬けを食べようものなら、私は眉間に皺を寄せて「ウンコを食べる人を見るような目付き」(ダーリン談)になるらしい。 彼は普段、自分が作る料理でも、一緒に食べる私のために味付けを辛くしたいのを我慢してくれている。 そして時々、 「嗚呼、思い切り辛い物を食べたいなあ……」 と呟くのである。
TVの地方情報番組で、美味しいと評判のカレー専門店を紹介していた。 「行ってみようか」 と私が言うと、 「カレーだよ? シオン大丈夫かなあ」 とダーリンは心配した。 専門店のカレーって、そんなに辛いの……? 急に不安になった私だが、辛い物しか無い店ならTVのように子連れで行ける筈が無い。 お品書きを見て、ダーリンはタンドリーチキンのカレーを、私は南瓜のカレーを頼んだ。 「あら……辛くなくて美味しい♪」 ナンにカレーを付けて恐ろしい勢いでパクつく私に、ダーリンはカレーを舐め取って、鶏を一切れ分けてくれた。 そのままでは辛くて私が食べられないため、キムチでも何でも、彼はいつもこうしてくれるのだ……子供を扱うように。 「このお店気に入ったわ。また来ようね」 と御機嫌な私に、ダーリンは言った。 「良かった、シオンが気に入ってくれて。そう言えばシオンが食べていたカレー、赤ん坊の軟便みたいだったな。色といい質感といい」 「…………」 普通言うかね? そういう事をさ。 私が抗議すると、彼は平然と言い放った。 「だから食事中には言わなかったじゃん。一応これでも気を遣ってるんだよ?」 本当に気を遣っていたら、言わないんじゃないのかしら……。
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