日々是迷々之記
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2003年08月28日(木) 自由研究のおもいで

夕方のニュースバラエティ番組でいまどきの夏休みの宿題事情を取り上げていた。昔のように「ドリル一冊」とか「はみがきカレンダー」のようなものは姿を消しつつあり、自由研究がメインとなりつつあるようだった。

街角の親子にインタビューをすると、「自由って言われたって何をしたらええかわかれへん。」という答えが多かったのにはちょっとびっくり。私は自由研究や植物の観察日記を書くのが一番好きだったからだ。

夏休みに入ると図書館でネタ探し。実験モノは実験の段取りを立て、研究モノは百科事典でネタを集める。そうやって大学ノート一冊分、びっしり埋めるのが好きだった。でも、今はそんな小学生はあまりいないようであった。

画用紙で作った「河原のいきもの図鑑」にはセルビンで採ったくちぼそ、ドジョウ、やご、ガガンボ、なんかのあんまりぱっとしない生き物を見開きをどーん使ってでっかく書いたりしていた。研究そのものよりも書いたり、描いたりするのが好きだったような気がする。

それが小学4年のとき、悲しくも屈辱的な出来事が起きた。先生は自由研究の用紙として女子にはうすいピンクのB4くらいの模造紙を2枚、男子には同じサイズでうすいブルーの用紙を2枚づつ配った。一人2つの研究をやれということだった。

私は女の子テイストのものが当時からキライで、習字道具入れの赤いカバンが嫌でスヌーピーの手提げに習字道具を入れていたくらいのへそ曲がりである。そんな子供にピンクの紙は屈辱的だった。

わたしは女の子テイストを払拭したいという思いもあり、その夏の自由研究の題材は「郵便の父・前島密氏について」にした。今はあまり見ないが1円切手のおっちゃんが前島密(まえじまひそか)氏である。当時、わたしは切手集めに凝っており、切手のデザインの由来を調べては天下をとったように親の前で解説していたりしたのだ。(痛いかも…。)

鼻息荒く平凡社の百科事典を調べたり、東京に住んでいたので大手町の逓信総合博物館に行き、前島氏の功績に激しく感心していた。夏休みの半分を前島密氏に費やし、その邪悪に思えたピンク色の模造紙を塗りつぶすように、研究の成果をまとめ、一円切手をプラバンにはさんで裏に木工用ボンドを付け模造紙に貼り付けた。

その時点で宿題は終わったも同然だった。あとは「歯磨きカレンダー」や「絵日記」をでっち上げ、計算ドリルは「一列計算し終わるまで息を止める」という早くできなきゃ死んじゃう方式で一日で終えた。ちなみに「一単位終わらせるまで息を止める」方式は今でも役に立つ。会議の資料をホッチキスで留めたりするときはこうやってやると早くできるのだ。

話はそれたが、ふと気が付くと自由研究の用紙はもう一枚余っている。その時点で8月31日。私は家にころがっていたキルティングのはぎれで「ポケットティッシュ入れ」を作った。単に両端を三つ折りしてかがってから、ティッシュに合わせて折って、ミシンで縫うだけだ。これにてきとーに「ティッシュがぐちゃぐちゃにならないようにと考えてつくりました。」とか用紙に書いてセロハンテープでティッシュ入れを貼ってできあがり。

始業式の日に宿題を提出し、自由研究は先生に採点され、後日教室の後ろに張り出された。父兄参観日があるからだ。その張り出された自由研究を見てわたしは仰天した。スペースの都合だろうが一人一枚の自由研究が貼ってある。私の作品は「前島密氏について」ではなく、「てきとーに作ったティッシュケース」が貼ってあったのだ。詳しくは覚えてないけど、「女の子らしい発想ですね。」とか書かれていて花丸が付いていた。

一方、「前島密氏について」は「先生もしりませんでした。」とか赤で書かれて、手元に戻って来た。なんだかむなしかったのを今でも良く覚えている。親に、「先生のくせに生徒がどれほど一生懸命やったか分からないのはおかしい!」と口をとんがらかせて言ったような気もする。

しかし、大人になったらわかるんだけど、「先生」は「何でも知っている」わけではないのだ。何かすごい研究をしてその功績を努力を子供達に伝えるような先生ってのもいるんだろうけど少ないと思う。ぶっちゃけた話、教育大学なりを出て、教員試験に合格したら先生になれるのだ。大学出たって「前島密氏」を知らなくたっておかしくはない。

でも、私の理想はサリバン先生やシーボルト氏だったので、手抜きのティッシュケースを見抜けない先生は一段下の存在だった。

そんなこんなで私は大人になってほっとしている。ネットのおかげでこうやって好きなことを書き散らかせるし、何も分からない人間におざなりの評価を受けることもない。

が、今の子供たちは最初っからなんでもあって、「自由って言われても何していいかわからない。」ってなるらしい。それも何だかなんぎな話だ。


nao-zo |MAIL

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