日々是迷々之記
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いつものように私は机に向かい書類をひろげ、資料と電卓をにらみ検算をしていた。わたしの机の右下には引き出しがあるので右側には次にやる仕事が段取り順に並べてあり、私が手を着けるのを待っている。
そこに白髪アタマをポマードで固め、三つ揃いの紺色ストライプスーツを着た、50過ぎの骨皮筋右衛門(死語)のおっちゃんが帰ってきた。そしてやにわに書類の束を取り出し、背後から私の段取りつけた書類の上に歩きしなに投げつけた。その距離約1メートル。風圧で一枚ものの書類は床に落ちた。
私はとっさに振り返りきっと目を見た。おっさんは一瞬目を合わせたが目をそらしコーヒーを入れに行った。その間無言だった。
私はショックを受けてしまった。これが仕事を頼むときのやりかたなんだろうか?「はい」とでも一言言って手渡しすることもできないのだろうか。それとも、ここ1週間くらいに入ってきた腰掛けに過ぎない派遣社員にそういう配慮は不要だと思っているのだろうか?
斜め向かいの課長(女性)に事実を伝えた。帰ってくるなり無言で書類を机の上に投げられた。指示がなかったので対応がわからないと書類を見せた。すると、「あの人はいつもそうやねん。一番後ろだけ外して私に渡してくれたらええわ。」と事も無げに言った。おいおい、そういうことじゃないだろ?
何で会社として書類を投げてよこすことを許容できるのだ?1つのオフィスの中で1つの会社として仕事を進めている以上、役付きも派遣もつながって仕事をしているはずだ。そんな中でそのような礼を欠いた振る舞いは許されないと感じている。上下関係はあってしかるべしだが、下の者はドレイではない。
こんなことは社会人になって11年目で初めてだったので、深夜に帰ってきただんなさんに話した。するとだんなさんも書類を投げられたことがあったそうな。ダンナさんは設計関連の仕事をしているのでA0の大きな図面を検討しているその真上に投げられてキレたそうだ。
「そのまま、ゴミバコに突っ込んだったわ。目の前で。」後で上司に呼び出されたが事実関係を伝えると、何もおとがめはなかったそうだ。さすがである。わたしもそうすればヨカッタが、なにぶん修行が足りないので何も対処ができなかった。
でもまぁ、相手のおっさんも私がにらみつけたことを感じているだろうから、それをよく思わずに支店長に報告するだろう。で、私の契約がどうなるか見物だ。愛想もしない、質問が多い、華やかさのカケラもない派遣社員。「向上心がない」「社風に合わない」などお決まりの主観的なせりふで首切りするつもりだろうか?それならそれで引継しないでやめちゃうけどね〜。
(だいたい、「コピーのしかた」なんて引継できないし。どれくらいずらして原稿を置くかとかは体で覚えないとわからんぞ。わかりたくもないけど)
とりあえず、月曜日に派遣会社の担当さんに報告することにした。先手を打たないと「私がにらんだ」ということだけが先に報告されて私が不利になる可能性大だからだ。事実は都合のいいように歪曲されがちだ。
長くはないな、この会社…。
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