夕暮塔...夕暮

 

 

視界は - 2005年07月22日(金)

きみが夏を好きだと笑っているうちはどうにか陽射しの下にいたいよ



…………



思い出せばいまだ視界は滲みゆく 閉じる瞼の裏の熱さよ



好きだよと閉じる瞼に嘘はない いまだ視界は滲むけれども



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目をくっきり開けるのも難しいような快晴の朝、知人宅の飼い犬を連れて、短い散歩に出る。もはや吠えることすら殆どない老犬は、犬舎から公道へと続くなだらかな坂道を下るのでさえよろよろと覚束ない。老衰をおもんばかって、散歩は10分が限度。ゆっくり行こうねと声をかけながら、夏草の匂い立つような木陰を歩く。
もうじき、ルルと別れてから一年経つ。ルルは亡くなる一週間前でさえこんな風にふらついたりしなかった、と自分の右側をふらつきながら(それでも楽しそうに)歩く柴犬を見ながら考える。だからわからなかったなどと言ってしまえば、きっと自己弁護が過ぎるだろう。そう遠くないとは思っていたけれど、あんなにすぐ来るとは想像しなかった。ごめんね。ごめんね。ごめんね。今も愛している。もっと触れてやればよかった、もっと大切にすればよかった。何かに追い込まれるように真夏の朝を立ちつくす、陽射しがあたためるのは喜びばかりではない。
生き物が、少しずつ老いていくことの意味を思う。


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