
|
 |
| 2001年12月28日(金) ■ |
 |
| Uncertain 第2章 01 |
 |
以前脳内革命で連載していた、Uncertainの続きです。まあ、気ままに書き綴ります。正直な話をすると下手の横好きです。第一章を読んでないと何が何やらな小説です。そうでなくても何が何やらなのでね(苦笑)よかったら読んでやってください。
================================================
「途絶えた…。」
先ほどまで、ぼんやりと彼方を見ていたアイスブルーの瞳が立ち上がる。その表情は険しく何か酷く急いで見えた。
「レン!急いでエアカーの準備を…」 「もう出来てるよ、何もトシ達一行を気にしてたのはユウだけじゃないんだ。」
半ば叫びつつ呼びかけながら瓦礫の山を降りると、そこではすでに赤毛の青年−レンといった−がエアカーにエンジンをかけて待ち構えていた。その表情にも、やはり急ぎの色が隠せない。 『ガクトの声が小さくなり始めている』 ユウが飛び乗るとすぐに、エアカーは白砂を巻き上げてその場を後にした。
砂嵐のせいだろうか、急いでいるせいだろうか、探し物が見つからない。気ばかり焦り始めるのが自分でもわかるのに、どうしようもなくて、それが更に視野を狭くした。それでもただ、こちらから意思を飛ばす事だけはやめない。 どうか答えて欲しいと。 エンジンを操りながら、レンがふと視線を上げる。ほぼ一色の視界の中に赤い何かが飛び込んだのが分かった。一瞬にしてそれは視界の奥へと流れる。
「ユウつかまって。」
一言だけ言うと、レンは急ターンで返す。
「レン?!」
赤いイメージだけが彼から伝わって、ユウは焦燥感を消すことができず彼の名前を呼ぶ。 『いた!』 人影が立ち尽くしている。深い麻色の布に包まれてただじっと。すでに歩く力もないのか、それともその機能を停止してしまったのか、その人影は動かない。少しはなれたところでエアカーを停めると、そこから少しずつ歩みをよせた。
「っっっ!!!!」
と、ユウの前を歩いていたレンが胸のあたりを抑え立ち止まる。瞳はまっすぐに人影を捉えて、顔には大粒の汗が浮かんでいるのだ。ユウは瞬時に悟った。レンは人影の心をキャッチしたのだと。
だがしかし、生まれてからずっと人の心に触れる事のできたレンが、これほどまでに大きな反応を返すのはあまりに不可思議だ。ユウは危険だと思いながらも、そっとレンの背中を支えると人影の心に触れようとした。
「ダメだよ、ユウ。」
レンが心と言葉でそれを遮断する。けれど瞳は未だ目の前の人影に釘付けだ。 どんどんと顔色の悪くなってゆくレン。ユウはレンが倒れることのないように、後ろから支えてやることしか出来ない。触れるレンの背中からは何も伝わらない。ロックしているのだ。決して外には漏らすまいと…。
それほどまでに周囲に悪影響的な意思なのだろうか?それほどまでに侵食の早い意思だと?いったい誰が?レンの心にあれほどまでに強く残った赤は、いったいなんだったのだろう。 ユウがふと視線を上げた時だった。
「それでいいんだよ、ガクト。」
レンが行ったのが先か、人影がそうしたのが先か、相手の左腕からレーザーナイフとおぼしき武器が落ちる。 「ユウ、もういいよそれより早くガクトを。」 レンから視線を上げて、もう一度人影に目をやると、それは砂嵐の中に倒れこむ。今はもう、彼からの意思は小さい。
レンをエアカーに向かわせて、自分は人影に駆け寄る。すると以前盗み見たデータの時とはずいぶんと様子が違うが、確かにガクトが横たわっていたのだった。その横顔は痛々しい。 失った右腕と、短く切られた金茶色の髪。そしておそらくは、レンの読んだ心が、あの時とは変わってしまったものなのだろう。
目の前を漆黒の闇と深紅の海が行き交う。耳鳴りに似た音と感覚が襲い、耳の後ろで波のような音が寄せてはひいた。そしてそれと重なるように何か低く脈打つのがわかる。最初のうちは波音は血液の流れだと解り、低く脈打つそれは心音だと理解した。けれどそのうちにそれら全ては一つになった。
始めは大きくそしてゆっくりと、やがて小さく集まりながら天地がわからなくなるほどの速さで渦を巻いた。やはり目の前には赤と黒しかない。
いろいろなものが消えていった。手を差し伸べるのに指の間をすり抜けて、時には指先すら届かずに。あるいはその存在に気が付きもしなかったかもしれない。皆それぞれに自分と同じ音を放ちながら、消える直前に俺を見てその音で語りかける。 けれど俺には全てを理解することも、聞き取ることすらも出来ずに、意味もない仕草でまた手を差し伸べる。どうか消えてしまわないでと。
これまでこれほどやるせない思いをしたことがあるだろうか。もう思い返すことも出来ずに、ただ伸ばしつづける左手も、今はない右の手も固まってしまって動かない。もうここから動けないんだ。『走って』と背中を押した君の声も、無言で背中を押したあの強い意志も消えてしまった。何を糧に歩けばいい?どうすれば足は前に出る?
誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か 誰か
どうか …
|
|