誰かのコト 私のコト
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題名に、「日記と言うよりメモ」の言葉が含まれた場合は、
母の様子や入院等についての内容が書かれています。
ここに、ガンのコトが少し書いてあります。
母に外出許可が出た。 家族揃って楓を見送ることができた。
妹は母と一緒に病院へ戻り 父は私と、家に一瞬立ち寄り 傘を持って会社に行ってしまった。
私は楓と一緒に部屋に入った。 静まり返った部屋 一人であることを強調するような柱時計の音
胸の中に楓を抱えてるのに 楓ちゃん、ただいまー 声に出す。
足音も聞こえないのに ソファーの上で寝っ転がってるそんな気がする 楓がそこにいる気がして、居間に入る。
床に落ちるポタポタいう音しか聞こえなくなって 心臓マッサージも人工呼吸も 意味がなかったんだ。 あの時、できるだけのことは やったと言いきれる自分と まだ何かできたんじゃないって 思う自分がいることに やっと気がついた。
楓を皆が見えるところにあげ、手を合わせた。
時計の音を聞きながら ウチってこんなに静かだったっのか、と思った。 母が、孤独で気が狂いそうになると言ったコトを思い出した。 12年前。
犬を飼いたいなぁー 母がそう言った時、父は反対したが強引に押し切った。 子供のこと以外で父を押し切ったのは、多分これが最初だろう。 妹にも、私にも犬を飼いたいと言ってきたのは それからしばらくした頃だった。
楓は、母の知人のブリーダーさんの所からやってきた。
母が子犬達と対面した時、母のひざに上ってきたのが楓だった。 母は別の子犬が欲しかったらしく あっちで皆と遊んでおいでと言いながら ひざから降ろし、気に入った子犬を見ていた。 しばらくすると また同じ子犬が母のそばへ、やってくる。 これを3回ほど繰り返したそうだ。 この子が私を気に入ってくれてるみたいだから 私もこの子にするわ。
楓が我が家にやってきた。 この子ちょっと下の歯が出てて、目もちょっと離れてるけど(笑) 私のことを気に入ってくれたみたいで、ひざに何度も上るのよ だから連れてきちゃった。 妹に犬が欲しいと言ったのはこの前日だった。 家に帰った妹は、居間に母と子犬が並んで昼寝をしてるのを見て ビックリしたのと嬉しかったのを覚えていると言う。 私はもう親元を出ていたので、その記憶がない。 何時の間にか、楓が家族の一員になっていたように思う。
犬を飼っている(た)人なら誰でも経験したような 何かをかじられたり、腹いせのトイレ以外のおしっこも イヤと言うほどやらされたボール投げも なかなかやってくれなかったお手も 嫌いなご飯を食べないハンストもどきも 何遍エサに混ぜてもカチンと薬だけ出されたことも 12年間、ホントに幸せだったと今、思う。
犬はもう飼わないと断言できない。 でも、今すぐ別の子を飼いたいとは思えない。 私もまだしばらく泣くと思う。でもそれで良いと思う。
楓へ いつもお留守番させてたからね。 今度は私達がこっちでお留守番してるからね。 そっちをしっかり調査しててね。 まだまだお母さんを迎えに来ちゃダメよ。 良い子だからね。 ありがとう、大好きだよ楓ちゃん。
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