みかんのつぶつぶ DiaryINDEX|past|will
土日や祝日の病院は、ひっそりとする。シーンとした、という表現はここのためにあるのではないかと思うくらいの廊下に車椅子の車輪がまわる音と押し歩く私の足音だけが響く。 ひっそりと、静かに。命の重みを感じながら押す車椅子。 大袈裟な表現だと笑われるかも知れないが、いつも毎日こんな重みを感じ考えながら過ごしているのだ。 誰もわからなくてもいいと思う。 誰も知らなくてもいいと思う。 だけど、吐き出してしまいたい。 青い空白い雲、生き続ける私。 無機質な廊下の冷たい温度が心地良くなる夏の日。 抗がん剤の投与が終わると必ず寝たままになってしまう数日を経て、 彼はいつも蘇えった。 生きて生きて、まだまだ頑張れると、目を開け何かを食べたいという。 そして車椅子に乗り、病室から出ていきたいと要求するのだ。 いま、感動している。何を今さらという月日の経過があるけれど、 私のなかでは残った闘いは続いているのだ。 病状は静かに身体を衰えさせていったけれど、 蘇えった彼の笑顔が、深刻さを隠してしまっていた。 彼が、 見えないようにしていたんだ。 優しい優しい強い人だった。
みかん
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