みかんのつぶつぶ
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2004年04月17日(土) 八重桜



心のどこかに穴が空いていたことに、ふと、気づく夕暮れの街角。この耳鳴りは、その穴から吹きこむ風の音ではないだろうかなどと詩人になる帰り道には八重桜がぼってりと咲き乱れ。この花を見ると、祖母の家で過ごしていた時代を思い出す。ピンクや白のティッシュで作る花。束ねた紙を一枚一枚丁寧に引き上げて作る花びら。そばにいる祖母から漂うポーラクリームの香り。私は、祖母の家から見下ろす夕焼けの街並みが切なくて、カラスの泣く声に哀愁を感じる5歳児だった。癇癪を起こすと宇津救命丸を飲まされた時代。


がんセンターの裏門にも、八重桜が咲いていた。綺麗だから見に行ってみようよと、車椅子を押して行った記憶。どう時間を潰そうかと苦心していたあの空間、風の温度、光りの色。こんなにも生々しく思い出せることが、とっても苦しい。


乾いた傷口から滲み出る血の温度を感じる胸の奥底。


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