桜の花の下で力なく微笑んでいたひと窓の外、桜咲き乱れる診察室で苦悩したひと桜咲く坂道を、ゆっくりと踏みしめて歩くひと桜の花濡れる病院を、心重くあとにしたひと桜咲く川沿いを、タクシーの窓から二人、眺めた朝桜の花散る頃、その左腕が不自由になったひと桜の葉陰蝉の声する頃、車椅子の生活に心狂い桜の葉散り落ちるとき、空へ逝ってしまった