みかんのつぶつぶ
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江ノ島には、たくさんたくさん想い出があるはずなのに、なぜかどれを何をとはハッキリ想い出せない場所だ。なぜだろう?
むかしむかし、父は私たち娘3人を連れて、江ノ島で死のうと思ったという。 あのとき、桟橋の屋台で知り合った男性に写真を撮ってもらった。私たちが可愛いからと写してくれたんだ。写真を送る住所を教えた父は、それで死ぬのをやめたのだろうか。そうなのだろうか?
お天気がよく、明るい空にオーバー姿の私たち。母がいなかった時だから、髪の毛はみんなくちゃくちゃで。女の子の髪の毛は、母親の手があるかないかというある意味象徴かも知れない。父親だけでは、どこか少し違うんだなあと思う。
父は、毎朝部屋のなかを掃き掃除をし、洗濯をして仕事にでかけていった。私は小学校2年生。家には次女と三女のふたりだけでお留守番。お昼には戻ってきて妹達にご飯を食べさせ、また仕事場へ戻っていった父。疲れていたんだね。
窓から、祖母の住む街の空へ向かい、3人でよく叫んでいた。
おばあちゃーん、 おかあさーん、
妹ふたりは泣いていた。 私は、泣かなかった。 どうして泣いていなかったのだろう?
泣いたらお父さんが、かわいそうだと思っていたから。
ヨットハーバーに点灯した灯りの影をみつめながら、 そんなことを思い出していた。 今日は、父の月命日。 今日は、彼を納骨して一年目。
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