imagina
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自分を含めて6人しかいない事務室内に、朝から良い香りが漂っていた。 これは多分資生堂のウィア。何となく好きな匂いなので覚えていた。
今日は思いの外客足が少なく、女性客の姿はまばらだった。 事務室内の人間かも知れないと思うが、自分の隣のタカダさんは化粧っ気がない。 そしてフレグランスというよりも風呂嫌いのイメージ。 なのに不思議なことにタカダさん方面からその匂いがする。 新年仕事始めということで何か心境の変化があったのかも知れない。 そもそも興味はないが、彼氏ができたなんてことも考えられる。
タカダさんとはお互い苦手オーラが滲み出ていて、普段は必要最小限しか喋らない。
「すごく良い香りがするけど、香水付けてる?」
「いや、いやいや、何も付けてないよ〜。ハハハ、自分じゃない〜? ハハ、アハハハハ、北川さん、多分自分の匂いだよ〜アハハ。 それかイノウエさんじゃないの〜?アハ、アハハハハハハ」
訊くんじゃなかった。
イノウエさんにもさり気なく訊いてみる。 美人でいつもニコニコしているこの人なら納得できるのだが、 最近は香水の類を付けていないという。 「他の男性陣かもね」なんて笑うから、一緒になって笑った。
結局香りの元は分からず終い。 しかし何だろう、自分の鼻がおかしいのか、悪臭じゃないからいいんだけど。 単純な自分はこのお陰で一日機嫌が良かった。
帰りにタカダさんがポツリと言った。
「香水どころか私、お正月から風邪で寝込んでてお風呂入ってなくて。すっごく変な臭いがすると思う。 あ、昨日我慢できなくて入ったんだけどね。臭いから周りの人に迷惑かけてると思う。 でもこれで香水つけるのもどうかと思うし」
何だか知らないけど命拾いをしたようだ。
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