逃げ水 - 2008年07月06日(日) 自転車で昼休みに外に出た。 梅雨明けを思わせるような初夏の日差しが体に突き刺さる、都会独特の空気が体にまとわりつく。日陰を通ってくる風が少しひんやりと感じられる。開け放したビルのドアから流れてくる冷房が半そでの腕を冷やす。 下り坂を40km/hくらいで下ってもいっこうに涼しくならない。足を止めた瞬間に、汗が額から流れて道路に黒いしみを作る。 蝉の声が聞こえてきても不思議ではない気がする。アジサイの花が不自然に感じられる。 ふわふわした白いワンピースの女性が、妙に風景に溶け込んでいる。 湿気を含んだ重い風でも、軽やかにスカートの裾がひらめく。 見とれている間に信号が緑に変わる。 走り出すと、アスファルトが続く国道の向こうに、逃げ水が揺らめいているのに気がついた。 噴水や滝のような鮮烈さは少しも感じられないあやかしの水。 ただただ見られることによって存在する逃げ水。 逃げ水にたどり着いたら、一緒になってこの世界から消えられるもかもしれないと、少し考えた。 ...
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