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| 2003年11月13日(木) |
『クリティカル・チェーン』 |
『クリティカル・チェーン』読了。エリヤフ・ゴールドラット著。三本木亮訳。ダイヤモンド社。 おなじみの装丁のシリーズ第4弾は、TOCの理論をプロジェクト・マネジメントに応用したもので、サブタイトルには「なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?」とある。 つまり、本書では様々なプロジェクトが当初の計画を大幅に遅れ、かつそれが常態化しているという現実に対して、実践的で有用な手法を試みようとしているのだ。そのための切り口となるのがおなじみのTOCの理論であり、それをわかりやすく伝えるためにこれまでと同様にビジネス小説の形をとっている。『ザ・ゴール』で大成功し、『ザ・ゴール2』、『チェンジ・ザ・ルール』と続けてきたいつものやり方だ。 本書でもその試みは成功している。ストーリーは『ザ・ゴール』には及ばないにしても、それ以降の2作と比べるとひきつけられるパワーを持っているし、扱っている「プロジェクト」という題材にも、多かれ少なかれ誰もが何らかのプロジェクトに関わっている現在関心度が高いということもできるためだと思う。
物語は、エグゼクティブMBAの準教授であるリックが、自分の生徒たちが実際に直面している課題の解決を通じて、プロジェクト・マネジメントの理論を形成していく形で進んでいく。自らも終身在職の資格を得るために実績を挙げなければならないという状況のなかで、会社から特命を帯びていて藁にもすがる思いの生徒たちの、現実の問題に対処することのできる手法をともに生み出していこうと試行錯誤していくのだ。 このシリーズにひきつけられるのは、根本的にはストーリーの単純明快さ(成功物語であるということ)だ。数々の難問が主人公たちの目の前に立ちふさがるのだが、結局最後には魔法の武器(本書の場合はTOCの理論)を使って難解な挑戦に勝利したり目的地にたどり着くことができる。それだけで先のページを手繰ろうという気持ちが強くなるし、その魔法の武器についてより詳細を知りたいという気持ちを抱くこともできる。
ボトルネックや、クリティカル・パスなど、シリーズを読んでいると見慣れた単語が頻出し、どちらかというと思考プロセスを扱っていた『ザ・ゴール2』に近いイメージがある。TOCの理論は生産分野だけに活用できるものではなく、その他の様々な分野にも応用することができるのだということがよくわかるようになっているのだ。もちろん、難しくわかったような気になっていてもまだまだ理解できていないポイントも少なくないのだけれど、それでも重要な部分についてはある程度把握することはできたように思う。 折り返しの部分には、こう書かれている。
なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか? そんな、誰もが抱えるジレンマを解決する!
●所要時間が大幅に伸びてしまう「掛け持ち作業」。 ●必要以上に見積もられる「セーフティー(時間的余裕)」。 ●時間があっても、ギリギリまで何もしない「学生症候群」。 ……しかも、浮いた時間は無駄に消費される。
これまで考慮されてこなかったこうした人間行動の特性をふまえ、プロジェクト・マネジメントにTOC(制約条件の理論)を応用したクリティカルチェーン。我々の常識を覆し、パフォーマンスを飛躍的に改善するツールとソリューションを提示する。
「掛け持ち作業」はどこの企業にもあるし(「仕事は忙しい人に頼め」なんていう言葉もあちらこちらでよく聞くくらいだ)、課題を与えられた際に評価と連動している分時間的な余裕は課題に見積もっていることもよくあることだと思う。また、「学生症候群」だって、もうとっくに学生じゃないのに、試験前の徹夜と同じようなことを行っているときもある。そんなふうに、身につまされる人にとっては、本書を読む価値はあると思う。どちらかというと実務的なプロジェクト・リーダー的な役割の人の方がより実践することがしやすいとは思うのだけれど、そうじゃない人でも充分ためになる。
それにしても、このシリーズはあといったい何冊出るのだろう?
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お知らせ
今日は久しぶりに川崎で夜ご飯を食べたのですが、新しい駅ビルを見学できなかったのが残念だったのでした。
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